風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

孝行息子

2010-08-28 14:16:22 | 歳月
 夫婦も新婚のときはひとつベッドで寝るが、そのうち隣のベッドになる。
もっと年をとると、隣の部屋になり、やがて階上、階下になる。
 
 おならをしても、いびきをかいても、夜更かしをしても、歯ぎしりをしても、誰にも遠慮はいらない。
 深夜のひとときは、それぞれに、なかなかオツなものである。

 友だちの息子が結婚することになった。
相手が東京の人で、顔合わせに、友だちは夫婦で上京することになった。
 
 よく気がつく息子は、両親のために、赤坂の一流ホテルを予約してくれた。
 ついでに、どこでも行きたいところへ案内するからと、二泊、食事つきで息子の招待だったそうである。
 
 孝行息子だねえと、風子ばあさんが褒めた。

 東京から帰った彼女が、お土産のくず餅を持って来てくれた。

「それがねえ、ツインの部屋でね。長年、主人と一緒の部屋になんか寝たことがないから、なんだか、きまりが悪くてね」

 我が家に戻った昨夜は、数日ぶりに、一人で、ぐっすり眠ったという報告であった。

 きまりが悪い……という日本語を久しぶりで聞いた。
 きまりが悪い、という言葉も、こんな状況も、若いひとには通じないかもしれないが。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そんなもんかも (nampoo)
2010-08-28 23:33:17
本当に久しぶりに目にした言葉でした。
長年別々の部屋で寝ていて、たまに一つ部屋に寝ると、きまり悪いと思うのかも知れませんね。

そのご夫婦は一緒に旅行などされなかったのでしょうか?
そのときも決まり悪かった?
返信する
そんなもんです (fuuko)
2010-08-30 11:56:04
夫婦で旅行するのが一番気楽と
いう方もおりますが、
夫婦で旅行しても日常を引きずるから
いやというひともいます。
「きまりの悪かった」この友人はあきらかに
後者ですね。
返信する

コメントを投稿