中学生になったときにはすでに黒板の字が見えないくらい近視がすすんでいた。
眼鏡を買ってほしいと親にいうと、
女の眼鏡は器量が三分さがるといわれ、
おまえの器量で三分下がったら取るとこなくなると父親が言い、
眼鏡は買ってくれなかった。
今なら言葉による虐待と言われても仕方ない話かもしれない。
ははん、わたしは不器量なのだと悟ったが、それで父を恨むこともなかった。
国語や社会科なら黒板が見えないでも教科書を見ていればよかったが、
数学なんか、先生が黒板をつかって数式を解くのが見えないのだから
理解できるわけがなかった。
数学ぎらいは
あのとき父が眼鏡を買ってくれなかったからかもしれないと思うが、
だからといって親に反抗した覚えもない。
あんなことを言ってたけど、
ほんとうは五人の子を食べさせるので手いっぱいで、
眼鏡を買ってやる余裕がなかったのかもしれない。