風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

父からの便り

2012-02-23 11:10:32 | 思い出
       風子は長女だったせいか、母とはとくに仲が良かった。
       実家へ泊まりに行くと、日付の変わるまで喋っていた。
  
         一度寝た父が、トイレに起きてきて、
     何だ、お前たちは、まだ喋ってたのかとあきれたりした。

     そんなわけで、母の思い出は多いが、父の思い出は少ない。

         ところが、古い手紙を読み直していたら、
      意外なことに、父もけっこうマメに便りをくれていた。
  朝顔が咲きました、とか、いま役所から帰ったところです……などと書いてある。

        一番下の妹はとくに父親に可愛がられていた。
     彼女が、九州の風子のところへ遊びに来ると東京を出て、
    広島へ寄り道をしたときなど、何通ものハガキが風子のところに届いて、
          父を心配させている。

     途中下車で広島の知人を訪ねることは出発前に言ってあったのだろうが、
        5日も滞在するとは言ってなかったのだろう。

      このハガキが着いて、まだリョウコがそちらへ行かないときは、
       自分が広島まで行ってみようかと思う、とまで書いてある。


すでに社会人だった妹を、新幹線で広島まで所在を尋ねて行こうと考えるような人だったのかしら、と今ごろになって思いがけない父の一面を見ている。

      今の若い人には通じないだろう、携帯電話などなかった時代の話である。