折々に処分してきたつもりだが、
古い手紙の束がまだ大量にあった。
捨てる前にと読みはじめたら、三日かかっても終わらない。
昔の人間はよくも手紙を書いたものだと感心する。
風子が世帯を持ったころは、まだ我が家に電話はなかった。
むろん、携帯もパソコンもファクスもないから、
郵便は大事な伝達手段であった。たいがいのことは郵便ですませた。
結婚してまもなく、東京から九州に移った風子は、
両親が恋しくてせっせと手紙を書いた。
両親も忙しいのに、よく返事をくれた。
「お手紙ありがとう」で始まる手紙が多いから、
こちらも大量に出していたとわかる。
×月×日、博多駅に何時到着、迎えに出てください、
などという父のハガキもある。
今なら、メールでたちまち、ピッといくところだが、
郵便だと数日かかった。
まだハガキ、届きませんという手紙もある。
ハガキと手紙、二通一緒に届きました、
このつぎから、投函日を記入してくださいなどと書いたのも出てきた。
どちらも三日にあげず手紙を書いていたのだ。
気が遠くなるような一昔が、目の前に束になってここにある。