家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

住宅本の読み方

2005年01月24日 | 家について思ったことなど
住宅関連書籍(住宅本)を読むときこそ、読者はリテラシーのようなものを意識すべきだ。
リテラシーとは、所属する世界によっていろいろな使い方があるが、私としてはおおまかに、「情報の優劣、正確さを判定または推定し、取捨選択しながら正しくまたは有効に情報を使いこなすこと」であるというような認識でいる。
なぜ、そのようなものが必要かといえば、いたずらに施主を右往左往させるパブリシティ(宣伝)本やら、住みやすさとはこういうものと決め付けたような本が多すぎるからだ。健康関連本の世界と似たような状況といえばわかりやすいだろう。

本格的に住宅本を読み始めたのは、自分が家を建てると決めてからと言ってもいいが、それでも手当たり次第といってもいい感じに(税金を有効活用して)数十冊は読んだ。

 読んでいくうちに、不必要に施主を混乱させると感じたのは、特定の工法や建材を推薦する本だ。
 いろいろ出ているが、だいたい構成は以下のようなもの。

① 施主が陥りやすい家づくりの<誤解>を紹介
② <勘違い>した・させられた施主がひどい目にあった実例
③ なぜそんな状況になったかの解説
④ 失敗しないための<すぐれた>やり方を紹介
※上記<>は、あくまで本の著者がそう主張しているという意を持つ。

このような構成からして、注文をつけたい。前段で他社・他者のやり方に対する懸念や、ひどいときには恐怖をあおる。ここで施主を不安がらせて引き込む。そんな、推理小説みたいな導入部にしなくたっていい。施主、施主候補は、こういう構成の本は引いて読むべきだ。
 こすっからいと思うのは、他社・他者のやり方に対する傍証が非常に偏っていること。他社・他者の失敗例を持ち出すのはいいが、まるで「このやり方だと必ずこうなる」みたいな論調で書いてある。
 車を買ったら必ず事故を起こす、というのに近い表現をして恥ずかしくはないだろうか。「必ず」でなくとも「危険性が高い」みたいな言い方をする。

施主が知りたいのはそんなあやふやなことではない。問題が発生しているとして、それがどのくらいの頻度で起きているのか、ということだ。
 程度に差はあるだろうが筆者達のやり方での失敗例だってあるはず(皆無とはいわせない)。他者の「数少ない」失敗例をあたかも頻繁に発生しているような紹介が卑怯な行為であることになぜ気がつかないのか。頻繁に発生しているのが事実だという自信があるなら、100件中で10件、などと具体的なデータを出して欲しいものだ。
 そして施主としては、「同じ工法で、失敗したときとしないときにどのような違いがあったのか」ということこそ知りたいのに、自分達の工法の成功例と、自分達以外の工法での失敗例しか載せていない。

ここまで述べてきたようなことは、住宅業界にいる人間にしてみれば、「いまさら、そんな分かりきったことを何をぐだぐだと言っているのだ」というような話だろう。しかし、その「わかりきったこと」を多くの施主予備軍は知らない。
住宅本の問題点はまだまだある。反面、ベタな本はベタなりに役に立つ部分もある。「施主のための住宅本の読み方」って本をだしたら、そこそこのニーズがあるように思う。何人かの施主がグループになって、家の建て方ではなく、住宅本の読み方に関して議論すれば、中立的スタンスで役に立つ本ができあがるのではないだろうか。