桜の花の下から人間を取り去ると恐ろしい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり見渡す花びらの蔭に子供のまぼろしを描いて狂い死して花びらに埋まってしまうという話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖ろしいばかりです。
(坂口安吾『桜の森の満開の下』)
桜の樹の下には屍体が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。
(梶井基次郎『桜の樹の下には』)
青山墓地の桜の下には、間違いなく死体が埋まっている。死体が埋まった上で育った桜は、こんなにも見事な花を咲かせるのだ。
そのことを真剣に考え始めると、気がおかしくなる。
鈴木清順監督が、自作の映画に必ず桜吹雪のシーンを入れると以前書いた。もうそれだけで、風景がこの世のものではなくなる。
桜の持つ魔力だ。
春彼岸から二週間遅れで墓参りに行って来た。1日に満開宣言があって最初の週末だから、さぞかし花見客でごった返していると思いきや、宴会をやっている風景はまったく見られなかった。
どうも、通路にシートを広げてやる花見を、墓地側が規制しているようなのだ。
去年はたくさん出ていた屋台もまったくなく、静かなものだった。
しかし、それはそれで、何か物足りない。1年に一度のことだし、大目に見てやっても良さそうなものだが、ゴミやいたずらなどの被害もあって、そんなことから規制したのだろう。
「粋な計らい」というものがあっても良さそうだが。
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杉並第五小学校の桜が移植されたことは以前に書いた。はたして根付いて満開の花をつけるのはいつのことだろうかとも。
なんと、咲いているじゃありませんか。短期間のうちに小さな枝を伸ばして、いくつかの花を咲かせていた。
すごい生命力だ。
ぐるぐると包帯を巻かれて、まるでミイラのようだが、どっこい生きている。
こうなってくると、もう感激ものである。包帯の隙間から顔を出した花が何ともいじらしい。
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