ひまわり博士のウンチク

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「最近の若い者は…」

2006年08月27日 | うんちく・小ネタ
 「最近の若い者は…云々」ということばは、エジプトのピラミッドの内壁にも書かれていたと聞きます。ジェネレーションギャップはいつの時代にもあるようで、今に始まったことではないという証拠でしょう。
 しかし、あえてそうも言っていられないのではないかという事例をご紹介したいと思います。

●赤  紙
 一つは先日、某出版社の社長が雑談の中で話したことです。もうだいぶ日数もたってしまったので正確ではありませんが、こんな内容だった気がします。
 鋭い論評とわかりやすい文章で好著を多出しているH氏が、若者たちの前で講演しました。Photo_5「戦争中は、平和に暮らしている市民が赤紙(召集令状)を受け取って、準備する間もなく兵士として軍隊に入らなければならなかった」(写真は「召集令状」いわゆる赤紙=写真をクリックすると拡大できます)
 こう語るH氏に、若い聴衆から「そんなの民主主義じゃないじゃないですか」という声が上がったそうです。H氏は「この時代はね、民主主義じゃなかったんだよ」と答えて愕然としました。「こういうレベルの人にこそ話していかなければならないんだ」と。
 民主主義というものが、いつの時代にも厳然として存在していて、それに反することは犯罪だと信じているのです。今は日本国憲法の中に民主主義がうたわれていて(もっとも、最近はそれが揺らいでいます)民主主義に反することは犯罪ですが、逆に「民主主義が犯罪だった時代」もあったことは知らない、というわけなんですね。

●オーオカショーヘーは中国人?
Photo_6Photo_7 8月19日付の朝日新聞に、ジャーナリストの莫邦富さんのコラムがありました。新聞記事なので著作権の関係上そのまま掲載できませんので要約します。
 総理大臣の靖国参拝について、彼のもとを取材に訪れる日本のメディアが増えたそうです。莫さんはその人たちに必ず「大岡昇平の『野火』を読んだことはありますか」と聞きます。『野火』とは大岡昇平が捕虜になって収容所の中で聞いた話を元に書いた小説で、終戦まぎわに日本の敗残兵がレイテ島の山中を逃げまどう壮烈な物語です。
 莫さんのもとを訪れたジャーナリストはだれも読んでいなかったそうです。そして大学院生たちにも聞いてみると、やはり全員が首を横に振ります。帰り際の極め付けの質問が「オーオカショーヘーという人は中国人ですか」だと。(写真は大岡昇平氏と新潮文庫版『野火』)
 中国にトウ・ショウヘイという人はいましたが。

●知らないのがフツーの時代
 アジア太平洋戦争というのは1931年から1945年まで15年間も続いた戦争ですが、多くの人が1941年のパールハーバーからが戦争だと思っているようです。それ以前の10年間に日本が大陸を侵略してどんなことをしてきたのかは、学校の歴史の時間でも教えないし、メディアもめったに取り上げることはありませんから、知らない人がいても何らふしぎはありません。
 東京大空襲や原爆では日本は被害者ですが、アジアで日本はその何倍もの人々を殺害してきた加害者なのです。これはまぎれもない事実です。その事実が日本人の間に知られていないということなのです。
 ですから、すっぽりと開いたその隙間に、「悪いのは中国や朝鮮だ。731部隊や南京事件は、中国が金が欲しいからでっちあげていることで、それを日本で宣伝しているのは中国や北朝鮮の手先の共産主義者だ」などという、ちょっと勉強した人ならばすぐにウソとわかるような話を大手メディアが有名人を使って伝えたりするものだから、そっくりそのまま信じてしまう人間がたくさんいるわけです。
Photo_828342774 ドイツがナチのホロコーストを学校で教えるように、日本も南京事件や731部隊のことを学校で教える必要があります。そして、ドイツでは「ホロコーストなどなかった」などというたぐいの発言には法律で罰が課せられます。日本も法律で、旧日本軍による残虐事件の事実を否定するような論評は、処罰の対象とするべきでしょう。(写真は光文社版(角川文庫でも)の森村誠一『悪魔の飽食』と岩波新書の笠原十九司『南京事件』

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