ひまわり博士のウンチク

読書・映画・沖縄・脱原発・その他世の中のこと

「アジア記者クラブ通信」238

2012年05月05日 | 本と雑誌
Kurabutsushin1
Kurabutsushin2
 
 スケジュールが重なって参加できなかった元NHKプロデューサーの永田浩三氏の後援記録「3・11までなぜ書けなかったのか メディアの責任とフクシマ原発事故」を読んだ。
 本号は5月5日号で、いみじくも日本にあるすべての原発が42年ぶりに停止する記念すべき日だ。
 
 NHKは原発事故が起きた直後から、大本営発表的な報道を繰り返し、すっかり国民の信頼を失ってしまったことは周知の通りで、この問題をNHK内部から見た目で解説する。
 
 事故直後の報道解説で、原子力村よりの科学者をゲスト出演させたのは、NHKの権威主義であって、肩書きを信頼して市民を信頼しないという背景がこうした事態を引き起こしたという。
 これは、権力に迎合するというような悪意があってのことではなく、基本的に市民セクターの人たちとの交流が浅く、人材が広く把握できていないせいだと語る。
 
 フクシマの事故があるまで、原子爆弾についての発言にタブーはなかったが、原子力の「平和利用」に異を唱えることは困難だった。昨年3月の原発事故より2カ月前に企画されていた大江健三郎さんと大石又七さんの対談では、原爆について語るのはいいが、原子力発電がいけないということを二人で堂々と言葉にすることには待ったがかかりそうな雰囲気だった。
 
 「NHKスペシャル」など非常に質の高い番組もNHカーは作っているが、NHKの報道にタブーはあるのかという会場からの質問に、明白な意味でのタブーはないという。しかし、情報ソースがまんべんなくあるのかというとそうではなく、偏りがある、ということが事実だそうだ。
 
 NHKといっても内部には力関係があって、「ETV」などの教養番組を作っているセクションは弱小集団で、主流にはなれない。反面主流にいる人は、ある一定のルールを犯してまで行動することは難しかっただろうという。
 つまり、国が指定した危険区域の内部まで入り込んで取材するということは、記者であっても困難なことで、禁を侵して取材することでの外部からの非難を恐れているらしい。
 
 永田氏はかつて問題になった慰安婦問題裁判のドキュメンタリーにかかわった人で、NHKはフジテレビとともに「慰安婦問題」という単語の前に「いわゆる」をつけて報道したことについて語った。
 「いわゆる」という言葉をつけることで「NHKはそんな問題があるかどうかを判断する立場にないが、世間には慰安婦問題があるといわれている」という、存在を認めないような表現になる。「いわゆる従軍慰安婦といわれる女性」とスーパーをかぶせた。これはフジテレビでもしなかったことで、彼女たちを貶める行為だと批判した。
 
 
 「アジア記者クラブ通信」は細かい字でびっしり書かれているので読むのになかなか骨が折れるが、後援記録を読んだ勢いでジェームス・ペトラス「『新買弁階級と軍、労働者階級との対立は激化する』現代中国への視座を転換せよ」も読んだ。
 結構な長文なので、要約しても相当量になるので、興味のある人は「アジア記者クラブ」(03-6423-2452)に問い合わせて入手していただきたい。1部300円、年会費5000円で定例会の割引がある。
 
 で、要約の要約になるが、要は次のような内容である。
 前半はジョン・ホブソンの「西洋文明の東方起源」(2004年 未邦訳)を参照しながら、革命前の中国の台頭と没落を描く。
 そして、共産革命を評価しながら毛沢東の生前と死後の違いに付いて述べ、それぞれの時代で築き上げたものと失われたものについて詳しく述べている。
 最後は現在と将来における中米関係について述べ、アメリカの軍事至上主義も中国の経済優先主義も、共に将来を約束するものではないとする。そして両国が、健全な未来を構築するためにどうすべきか、その青写真を描いて結んでいる。
 
 この論文は2006年3月6日付の、著者のホームページ上に掲載されていたもので、英語に堪能な方は以下で閲覧できる。
 http://petras.lahaine.org/?p=1890
 
 「アジア記者クラブ通信」
 年会費5000円 郵便振替口座 00180-4-709267  口座名 アジア記者クラブ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
■2011・6・7 中村哲医師講演会■
~ケシュマンド山系に記録的集中豪雨 緊急報告~

主 催/ペシャワール会現地報告会実行委員会
後 援/杉並区教育委員会

 2011年6月7日、アフガニスタンで活躍する中村哲医師の講演会を実施いたします。
 後援へのご参加と、ご賛同をお願いいたします。
 
 〔日時〕2012年 6月7日(木)18時20分 開場 18時40分 開演
〔会場〕セシオン杉並大ホール(地下鉄丸ノ内線東高円寺下車5分)
〔料金〕前売り 1,200円/当日 1,500円(高校生以下無料)
 
◆詳しくは以下にアクセス
 http://blog.goo.ne.jp/gallap6880/d/20120503