高3自殺「予見できた」二審も学校に賠償命令 福岡高裁、一審から増額
2021/09/30 20:27
(西日本新聞)
福岡県内の私立高3年だった山口勲大(いさむ)さん=当時(18)=が2013年に自殺したのは、学校側が同級生のいじめへの対応を怠ったためだとして、遺族が高校を経営する学校法人に約9500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、福岡高裁であった。森冨義明裁判長は「自殺を具体的に予見し、回避することが可能だった」として、一審福岡地裁判決と同様に学校側の責任を認め、約3千万円の賠償を命じた。
判決で森冨裁判長は、いじめと自殺の因果関係を認めた上で、2年時に山口さんの体のあざから自殺未遂を疑ったり、実際にいじめを見たりした教諭が教員間で情報共有していれば自殺は予見できたと指摘。「学校の危機管理マニュアルなどに従って具体的な対応を実行していれば自殺を回避できた」とした。
賠償額は、将来得られたはずの「逸失利益」を改め、一審判決から約360万円増額した。遺族が名誉回復のために求めた謝罪文の校内掲示については一審に続いて退けた。
判決後に会見した山口さんの父(68)は「学校側から謝罪もなく、どれだけ反省しているのか全然分からないが、この判決がいじめ防止に役立てばいいと思う」と話した。学校法人は弁護士を通じて「判決を重く受け止め、引き続きいじめ防止の取り組みを進めてまいります」とコメントした。
判決によると、いじめは1年時から始まり、2年時から暴力を伴うようになった。使い走りなど多様な嫌がらせも一方的に受け続けた。
いじめをした元同級生8人は全員が謝罪し、解決金を支払うことで一審で和解している。(吉田真紀)