monologue
夜明けに向けて
 



中学時代のある日、向かいの家の離れでなにやら作っている父の友人の技術者おマーちゃんに呼ばれた。テープレコーダーというものを作ったのでこのマイクに向かってなにか言えという。わたしはそれがなにやらわからず、その時ガムを噛んでいたのでただクチャクチャと音を立てた。父が帰ってくるとおマーちゃんは録音したテープを再生してくれた。わたしがまともなことばを発することもなくただ呆けたようにクチャクチャとガムを噛む音だけが流れてくるのをみんなで鑑賞するとは思わなかった。わたしはとても恥ずかしかった。おマーちゃんにとってはそれでも十分だったらしい。どんな音でも録れていれば成功。
それから何日かして父がわたしのためにとナショナルの新製品だったオープンテープレコーダーを買ってきた。おマーちゃんの作ったテープレコーダーに感化触発されたらしかった。その時は気づいていなかったがわたしはそのテープレコーダーによってミュージシャンになるべく育てられたのである。それはミュージシャンになるには最も必要な機器だった。ギターを練習する時にはアンプ代わりに使ったり、好きなラジオ番組を録音して何度も聞いて気に入った歌を繰り返し練習したりずいぶん世話になった。高校時代には学校に持って行って生徒が自由に運営するホームルームの時間にラジオ番組のようにリクエストを募って黒板に10位まで書き出してその曲を順にかけたりしたものだった。
ある日の京都市立塔南高校のわたしのクラスの洋楽ランキング
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1位ワシントン広場の夜はふけて/ヴィレッジ・ストンパーズ
2位悲しき雨音/カスケーズ
3位ポエトリー/ジョニー・ティロットソン
4位内気なジョニー/ジョニー ・ソマーズ
5位ブルー・ヴェルヴェット/ボビー・ヴィントン
6位悲しき悪魔/エルヴィス・プレスリー
7位涙のバースデイパーテイ/レスリー・ゴーア
8位北京の55日/ブラザースフォー
9位スピーデイ・ゴンザレス/パット・ブーン
10位ミスター・ベースマン/ジョニー・シンバル
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今の耳でユーチューブを聴き直してもいい曲が多かったと感心する。楽しい時代だった。
fumio




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