monologue
夜明けに向けて
 




「カリフォルニアサンシャイン」その5
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 日本人女性スーパーバイザーは「それでは、クラス決めのテストをしますから副校長の部屋に行ってください」という。
副校長室に入ると黒髪でラテン系の威厳のある中年女性が口頭試験を始めた。当然とはいえ質問もすべて英語だったのでなにもわからない。答えようがなかった。なるべくゆっくり発音してくれているのだが聞き取れない、ハクチと思われたかもしれないと思いながら副校長に付き添われて事務室に帰った。副校長はスーパーバイザーに結果を告げて、バイ、と出て行く。「あなたはABCのクラスの段階のCクラスです。じっくり勉強してがんばって上がっていってください」スーパーバイザーはそういって微笑みかけた。もっと下のクラスがあればそのクラスに振り分けられたことだろう。とにかくクラスが決まった。「アパートを一緒に探してくれる卒業生を喚んでありますから決まったら30ドルあげてください」と卒業生に紹介してくれた。そんなバイトをしているかれの車でバスで通学できる範囲のアパートをしらみつぶしに当たって探す。青空にパームツリー並木が似合う町並み。11月というのに30度を超す暑さで驚いた。相場を知らないので家賃(レント)は高かったけれどどうせしばらくして慣れたら引っ越すつもりで学校の近くに決めた。トランクその他を運び込んでやっとひと心地ついた。
夜、アパートの屋上に登って驚いた。空が広いのだ。日本で見慣れた夜空と違う。なぜかわからない。ずーっと見上げて飽きなかった。前途にやっと光が差し込むように感じた。

 翌朝、Cのクラスに出席して驚いたのは先生が若くて可愛かったことだ。
クラスメイトはほとんど日本人だった。日本で英語の先生をやっていて本場の英語を習いに来たとかアメリカの大学に入るために必要な英語力を身につけるためとか学会でスピーチするためとかそれぞれに動機は違う。年代も19才から50才ぐらいまでまちまち。その生徒たちが美人先生が点呼するたびに日本式に「ハイ」と返事する。すると先生もすかさず「ハイ」と返す。アメリカ人にはそれが習性になっているのだ。挨拶は「ハロー「より「ハイ」の方が親しみ深くてハイといわれると必ず返す。上のクラスならアメリカ式に名前を呼ばれたら「ヒア」とか「イエス」と手を挙げる。Cクラスはみんな新入生でそんなことは知らない。20人ほどのクラス全員が順番に「ハイ」というたびに律儀に「ハイ」と先生も挨拶を返すのがなんともいえずおかしかった。
fumio

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