昨日の朝食後、自分の部屋より遙かに暖かく、太陽が差し込む
リビングへ小さなテーブルとパソコンを運び、さて今日は何から
始めようか・・・思ったとたん、頭をよぎったのはこんなぽかぽか
陽気でゆったりできる日にはクラシックでも・・・ということだった。
デッキに入れたヨハン・シュトラウス(Ⅱ世)のCDを聞き始め、
オーディオラックのリモコンを手にしてセンター音量やサラウンドボタン、
サブウーファー音量ボタンなどを操作しようとした時によもやの
事件(?)の発端が・・・・
その予期せぬ出来事とは・・・
洗濯物を干すために側で洗濯かごから一つ一つ取り出していた
妻の千恵子選手から突然『お父さんっ!音楽を聴くのならヘッドホーンに
するか自分の部屋で聴いてっ!』という思いもよらぬ尖った大きな声が・・・・
その声に一瞬、私もカチンときたのだろうか(そんなつもりはなかった
のだが)
『迷惑になるような音量でもないし、何でヘッドホーンで聴かなければ
ならないのだっ!・・』と声を荒らげて反撃(?)・・・
私はシュトラウスⅡ世の曲に続きシュトラウスⅠ世の曲の中で最も好きな
「ラデッキー行進曲」を手拍子を打って聴くつもりでいたのだが
その夢(?)はもろくも崩れた・・というより自ら諦め、ふてくされ
気味にデッキをとめてしまったのだ。
そしてお互いの間にしばし嫌な沈黙・・・
腹立たしさを抑えきれなかった私は言わなければいいのに・・・
ついつい・・『以前にも同じようなことがあったし、テレビを見てると
何時間も見ているって文句を言うし・・・何時間も見ている筈がない
だろう・・・何時間もと言うことは少なくても2~3時間のことを言うん
だぞっ!』と。
千恵子選手も負けじとばかりに『ずう~っと見てるじゃないの・・じゃ
今度書いておく・・』などといったものだから私はますますエスカレート
しそうになるのをぐっとこらえ、テーブルとパソコンを片付けると
さっさと自分の部屋へ・・・
なかなか怒りが収まらなかったがその原因は?・・・と考えてみた。
私がCDを聞き始めた時にちょうど千恵子選手は足腰の痛みに耐え
ながら(?)洗濯済みの衣類の入ったかごを持ってリビングに運び
庭に出ようとしていたのだと思う。
その時に私がいた位置はちょうどその通り道に当たるところだったので
足腰の痛みと庭に出たいのにちょっと邪魔だな・・・と思ったのかも
しれない。
ちょっとしたいらつきが思わぬ言葉に・・・と言う例なのか。
普段はそんなことで怒るようなことはないのによっぽど虫の居所が
悪かったのかもしれない。
それからしばらく自室にいた私は何となく後味が悪いという思いでどこへ
行くとも告げずに9時半頃、タイトルのとおり『プイッと家を出た』のだ。
こんなに気持ちよく晴れ、既に春が来たのかとも思われるような良い天気
だから少し時間が経てば心も晴れ晴れとして気分も爽快になること
間違いなし・・・と考え、単行本2冊を持ち車で「市民の森」の近くへ・・・
なるべ人も交通量も少ないところへ・・と思い、土呂中学校の近くの
静かな芝川の土手の近くに駐車。
そこでシートを倒し、CDを聞き始めた・・2月の気候とは思えないほどの
良い天気・・・車の中は暑いくらいでジャンバーを脱ぎ、窓を全開にしても
寒くない最高の天気に気持も穏やかに・・・音楽も心地良く心に響いた。
あまりの気持ちよさに『題名のない音楽会』の放送を観るのを忘れそうに
なり急いでテレビに切り替えた。
昨日は『ドアの向こうの音楽会~冬~』というタイトルで出演者(ゲスト)
それぞれの素晴らしい演奏を聴くことができたが、私は村治佳織さんが
『島の記憶~五島列島にて~』をクラシックギターのアルペジオで演奏した
ものと多久潤一郎さんのフルート演奏・・『春の声』が特に心に響いた。
私の家出(?)の原因となったオーディオデッキに入れたCDの最初の曲が
このヨハン・シュトラウスⅡ世の『春の声』だったから尚更不思議な
繋がりだと思い、感情が少し高ぶっていたのかもしれない。
土呂中学校の周りには桜並木、そしてその少し手前にある葉っぱの落ちた
大きなメタセコイヤの並木道は時折散歩やジョギングをする人が通るだけで
近くから小鳥の声も聞こえてくるほど静かだった。
そして時間の経過とともに歩く人の数も多くなり、土曜日のためか親子
連れや夫婦で歩く姿も・・・さらに高齢者も体力維持のためか目立つ
ようになってきた。
この芝川は水の流れる部分は狭く、川の中のほとんどの場所が枯れた葦で
いっぱいだった。
それを眺める人、土手の短い草の中を覗く人、嬌声を上げ走り出す子供と
追いかける若い父親・・・
車を停めた場所のすぐ側の土手を歩く人も暑いのか上着を脱いでいる
姿もたくさん見られた。
そして、心を穏やかにしてくれる小鳥たちもやってきた。
最初にやってきたのはツグミ・・・ちょこちょこっと歩いては立ち止まり、
スッと胸を張るあの独特のスタイルで小さいながらも存在感を・・・
さらにヒヨドリも一羽二羽と・・・そして極めつきは綺麗なオレンジ色の
ジョウビタキ(オス)・・・毎年我が家の近くでも見ることができたが
今年初めて出会うジョウビタキだった。
ツグミやヒヨドリは飛び立っては戻り、草の中の餌となるものを探すより
私と同じように温かい陽射しを喜んでいるように思えた。
持っていった本は少し読んだだけでほとんどが小鳥の動きや土手の向こう
側も含め、周りを歩く人の仲睦まじそうな動きや高齢者の時々立ち止まり
ながら懸命に歩こうとする姿を見守るようなものだった。。
いつの間にか私の心はすっかり落ち着き時計を見ると何もすることもなく
あっという間に2時間半が過ぎていた。
どちらが悪いということもなく『喧嘩両成敗』というほど大袈裟なものでもなく、
終わってみればやはり些細な出来事・・・仲良し故の小競り合いということに
しておこう。