町おこし062:長い冬眠から覚めて
――第2部:痛いよ、詩織!
いつの間にか、部室の隅に菅谷幸史郎の姿があった。彼は立ち上がり、長島と並んだ。恭二は固唾を飲んで、もうひとつの「うれしい報告」を待つ。
「新聞部のみなさん、標高新聞最優秀賞受賞おめでとうございます。一度抹殺された新聞は、全国一のお墨つきをもらって、戻ってきてくれました。標高新聞回収反対のビラをまいて、停学処分を受けた日のことを、懐かしく思い出しました。
さっき校長に呼ばれました。次回の町議会で、町の活性化プランを発表することが決まりました。会社の博物館を町民の団らんの場にするプランと、日本三大がっかり名所を活性化するプランの発表を、私たちに求められています。私は生徒会と新聞部とで、町議会に挑みたいと思っています」
恭二はホワイトボードに貼られた新聞の見出しに目をやる。そこには次のような大きな活字が躍っている。
――閑古鳥の鳴き声が聞こえる、会社の博物館
――日本三大がっかり名所で、さらにがっかり
菅谷が話し終えるのを待っていたかのように、大きなどよめきと拍手が響いた。長島が続ける。
「学研から送られてきた選評に、高校生と学校と町政が一体となって、標茶町の活性化を図っていると書いてあった。町としては、そうせざるを得なくなったんだよ。だから生徒会と新聞部は、スクラムを組んで、町議会でりっぱな提案をしてもらいたい」
また大きな拍手が起こった。恭二は思いがけぬ展開に、圧倒されている。回収された新聞は、とてつもないパワーを蓄えて、おれたちの元へと戻ってきた。恭二はホワイトボードに貼られた新聞に、再び目をやった。標高新聞は、誇らしげに光り輝いている。
「恭二、たいへんなことになったね」
詩織は涙をぬぐいながら、大きな瞳を恭二に向けた。詩織の瞳のなかには、恭二がいた。ずっとやるべきことを探し続けていた恭二がいた。恭二は、詩織の瞳のなかの自分に向かっていった。
「詩織、おれ、新聞部に入ってよかったよ」
「愛華部長が回収騒動が起こる前に、私たちの新聞をコンクールに送ってくれていたお陰だね」
騒然となっているなかで、愛華は語りはじめた。
「みんな、本当におめでとう。そしてありがとう。私は受験勉強があるので、本格的には参画できないけど、新聞部員として残らせていただきます。瀬口部長を中心にして、日本一に恥じない新聞作りをよろしくお願いします」
拍手が起こった。長島が続けた。
「授賞式には、南川と私が参加する。瀬口は菅谷生徒会長と一緒に、町議会でのプレゼンに備えてもらいたい」
また拍手が起きた。長い冬眠から覚めた新聞部の目の前には、希望に満ちあふれた未来が広がっている。
――第2部:痛いよ、詩織!
いつの間にか、部室の隅に菅谷幸史郎の姿があった。彼は立ち上がり、長島と並んだ。恭二は固唾を飲んで、もうひとつの「うれしい報告」を待つ。
「新聞部のみなさん、標高新聞最優秀賞受賞おめでとうございます。一度抹殺された新聞は、全国一のお墨つきをもらって、戻ってきてくれました。標高新聞回収反対のビラをまいて、停学処分を受けた日のことを、懐かしく思い出しました。
さっき校長に呼ばれました。次回の町議会で、町の活性化プランを発表することが決まりました。会社の博物館を町民の団らんの場にするプランと、日本三大がっかり名所を活性化するプランの発表を、私たちに求められています。私は生徒会と新聞部とで、町議会に挑みたいと思っています」
恭二はホワイトボードに貼られた新聞の見出しに目をやる。そこには次のような大きな活字が躍っている。
――閑古鳥の鳴き声が聞こえる、会社の博物館
――日本三大がっかり名所で、さらにがっかり
菅谷が話し終えるのを待っていたかのように、大きなどよめきと拍手が響いた。長島が続ける。
「学研から送られてきた選評に、高校生と学校と町政が一体となって、標茶町の活性化を図っていると書いてあった。町としては、そうせざるを得なくなったんだよ。だから生徒会と新聞部は、スクラムを組んで、町議会でりっぱな提案をしてもらいたい」
また大きな拍手が起こった。恭二は思いがけぬ展開に、圧倒されている。回収された新聞は、とてつもないパワーを蓄えて、おれたちの元へと戻ってきた。恭二はホワイトボードに貼られた新聞に、再び目をやった。標高新聞は、誇らしげに光り輝いている。
「恭二、たいへんなことになったね」
詩織は涙をぬぐいながら、大きな瞳を恭二に向けた。詩織の瞳のなかには、恭二がいた。ずっとやるべきことを探し続けていた恭二がいた。恭二は、詩織の瞳のなかの自分に向かっていった。
「詩織、おれ、新聞部に入ってよかったよ」
「愛華部長が回収騒動が起こる前に、私たちの新聞をコンクールに送ってくれていたお陰だね」
騒然となっているなかで、愛華は語りはじめた。
「みんな、本当におめでとう。そしてありがとう。私は受験勉強があるので、本格的には参画できないけど、新聞部員として残らせていただきます。瀬口部長を中心にして、日本一に恥じない新聞作りをよろしくお願いします」
拍手が起こった。長島が続けた。
「授賞式には、南川と私が参加する。瀬口は菅谷生徒会長と一緒に、町議会でのプレゼンに備えてもらいたい」
また拍手が起きた。長い冬眠から覚めた新聞部の目の前には、希望に満ちあふれた未来が広がっている。