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137:タウン誌のドキュメンタリー

2019-09-17 | 小説「町おこしの賦」
137:タウン誌のドキュメンタリー
 受験が終わった。発表になる前に、結果は歴然としていた。学校から帰ると、母が一冊の雑誌を手渡してくれた。『タウン誌くしろ』だった。
「役場の北村課長が、届けてくれたの。ウォーキング・ラリーのことが、出ているって」 
恭二は部屋で、さっそく読みはじめる。タイトルは「子どもと大人の知恵が融合/標茶町のウォーキング・ラリー誕生秘話」となっていた。

第一話:空振りだった大人の企画
 標茶町は地方再生予算一億円で、二つのプロジェクトを同時進行させた。狙いは、観光客の誘致にあった。標茶町は年々人口が減少しており、今では人の数よりも牛の方が多い。
そんな危機感から、考え出されてのが、一つは「会社の博物館」であった。この施設は企業の社員研修を意識したもので、三階には大小五つの研修室があった。そして二階は会社の歴史を伝えるべく、懐かしい会社の備品を集めた展示室になっていた。ところがこの施設は、ほとんど利用されることはなかった。
もう一つの企画は、「日本三大がっかり名所」の再現であった。高知県のはりまや橋、長崎県のオランダ坂、札幌市の時計台を町に建設して、観光客を待った。しかしこちらも、期待外れに終わってしまった。

第二話:子どもたちからの提案 
 こうした状況を憂いた「標高新聞」は、「私たちもいわせて」という特集を組んだ。ぽつねんと建っている「日本三大がっかり名所」を、魅力的な観光スポットに変身させる。閑古鳥の鳴いている「会社の博物館」を、町民の憩いの場に改修する。
この新聞は、大人の領域に子どもが入りこんできた、と猛烈なパッシングを受けた。結局、新聞は全数回収され、新聞部には活動禁止の処分が科された。
 しかし「標高新聞」は騒動になる以前に、学習研究社主催の全国高校新聞コンクールに応募されていた。そしてみごとに、最優秀賞に輝いた。選評では、大人と子どもが協力し合い、町の活性化を考える斬新な企画と絶賛されていた。
 こうした外部の反響に後押しされる形で、町議会は高校生を招いて、標茶町活性化の提案を受けたのであった。

第三話:大成功!標茶町ウォーキング・ラリー
 その結果、誕生したのが、「標茶町ウォーキング・ラリー」である。筆者も家族同伴で、参加してきた。標茶町をあげての、大歓迎を受けた。前記の「会社の博物館」は町民に開放され、お年寄りから子どもまでが楽しい時間を過ごすことのできる、「おあしす」に改修されていた。
「標茶町ウォーキング・ラリー」は、二十七カ所のスタンプを押すと願いごとがかなう、というコンセプトになっている。
自転車や犬の、貸し出しがある。魚つりやたこ揚げを、楽しむことができる。牛の乳搾りや昆虫採集を、体験できる。ここには標茶高校生の多くが、ボランティアで参画している。
「標茶町ウォーキング・ラリー」は、土日限定で開催されている。日帰りだけではなく、一泊二日のコースもある。
最後はモール温泉で、汗を流した。一日を大満足して、過ごすことができた。大人と子どもがスクラムを組んで立ち上げたイベントは、たくさんの町民に支えられて大きな花を咲かせた。(文責・宗像修平)

 恭二は新聞部の時代を、懐かしく思い出している。自分には町長や校長と、闘ったという気持ちはない。大人が勝手に、踊っていたのだと思う。大人の上から目線がぐっと降りてきたとき、つまっていた何かがはじけ飛んだのだろう。恭二は大きな伸びをして、標茶町って意外にやるじゃないかと思った。

074:楽しみながら仕事

2019-09-17 | 新・営業リーダーのための「めんどうかい」
074:楽しみながら仕事
――第6章:威力ある同行
◎ショートストーリー

 次のショートストーリーは、当時営業企画部長の私と上司との会話です。あなたが私の上司なら、どんな反応を示すでしょうか。

山本「米国ロシュの部下育成制度を、日本でも導入させてください」
上司「6製品を習得させるのに、10ヶ月かける? そんな悠長なことを考えるから、きみはダメなんだよ」
山本「1泊2日の集合研修で何ができますか? 私にやらせてください」
上司「ダメだ。認められない。そんな余裕がどこにある」
山本「営業担当者のレベルアップを可能にするのは、研修部ではありません。営業リーダーの手腕なのです」
上司「きみは、研修部を無能だというのか」
山本「研修部のスタッフを、無能とはいっていません。でも営業担当者のレベルに合わせて指導できるのは、営業リーダーしかいません」

 1人の営業担当者を育成するのに、10ヶ月をかけます。この提案に、納得する人は少ないでしょう。やがて、私はこの制度を「SSTプロジェクト」(次項を参照)に取りこんだのですが……。

本稿を読んだ受講者は、一様に驚きの声をあげます。米国の営業リーダーは、すさまじい負荷を担っています。にもかかわらず、楽しみながら仕事をこなしています。自分とのギャップを考え、多くの営業リーダーは「カルチャーショックを受けた」と感想をもらしていました。

米国ロシュのリーダーたちは、経費処理や実績の集計などもこなしています。仕事の実態は、日本と変わりません。「休日以外は、朝から晩まで仕事だよ」。彼らには、オフィスがありません。疲れて自宅に戻ってからが、内勤時間というわけです。


今村昌弘『屍人荘の殺人』文庫に

2019-09-17 | 妙に知(明日)の日記
今村昌弘『屍人荘の殺人』文庫に
■中学生の孫が一人で遊びにきました。もうすぐ修学旅行なので、小遣いをもらいにきたようです。私は田舎の中学だったので、小遣いは低額に定められていました。孫は公立の中高一貫校なので、1から2万円とおおざっぱな決まりのようです。貧富の差が少ないからなのでしょうね。■今村昌弘『屍人荘の殺人』(創元推理文庫)が出ました。早速買い求めました。本書は単行本で読んでいます。文庫になったら「文庫で読む500+α」で紹介しようと思っていました。再読してから書評をアップします。
山本藤光2019.09.17