21世紀航海図;歴史は何も教えてくれない。ただ学ばない者を罰するだけ。

個人の時代だからこそ、個人を活かす「組織」が栄え、個人を伸ばす「組織」が潤う。人を活かす「組織」の時代。

復興支援としての金融政策

2016年05月03日 11時48分46秒 | Weblog
 大地震が起きると、円高になる。
理屈は単純で、復興資金が海外から日本に流れ込むからである。

まず、大企業が再建資金を海外からも集める。(もしくは海外投資に回す予定だった資金を国内で使う)
中小企業も、資金を集めて再建費用に充てる。もしくは海外への投資を抑える。
個人も、海外資産を引き上げて住居の再建に充てる
保険会社は、保険金の支払いのために海外への投資分を引き上げる。もしくは海外への投資を抑える。
そして、世界中から寄付金が集まる。義援金が集まる。無償の支援物資が集まる。そしてその分だけ、有償の輸入製品が減る。


 しかし、円高が進みすぎることは、支援者にとって良くない。
例えば、1000万ドルの寄付金があるとする。 1ドルが110円であれば1000万ドルは、11億円になる。しかし、1ドルが95円になると、1000万ドルは9億5000万円に減ってしまう。
 為替の影響で、1億5000万円の資金が消えてしまう。


どこに行くのか? 地震で円高が進むと予想して「円買い」に賭けている博打打ちのポケットに入る。善意の資金が、強欲な人に流れ込んでいく。 それで良いのか?

 私は、よくないと思う。人々の善意が、一部の人の私腹を肥やすことに使われるのは間違っている。

 対策はある。単純な対策がある。日本銀行が動けばよいのである。
4月28日の時点で、一切の対策を発表しなかった日本銀行に私は失望している。多くの人が失望した。そして、5円以上の円高が進んだ。




 日本銀行がとるべき対策は、「義援金を日本円に両替するときに、相対取引で対応すること」である。単純である。
 対象を被災企業、被災個人、保険会社、慈善団体に限定して、義援金・復興資金の両替申請を受けつける。その両替の依頼に対して、為替市場を通さずに、日本銀行が相対取引で対応すればよい。この際適応する為替レートは、2015年の中央値にする。


 一部の強欲な人達が、慈善資金で私腹を肥やそうとしているのは、為替市場を通してである。つまり、復興資金が為替市場に入ることなく、日本円に両替されれば問題を防げる。

 必要とされる資金は、5兆円程度かと思う。大した額ではない。日本銀行は、毎年80兆円の国債を買い集めている。その16分の1の資金を投入すればよいだけである。 また、後々円安が進んだタイミングで、「円の買い支え資金」として使用すれば「為替差益」が期待できる。



 「為替市場」に介入するのは難しい。為替市場は規模が大きい。そして、「為替市場」に介入する場合、諸外国からの批判が大きい。

 被災者、被災企業、援助団体を支援するために、無駄金を使って、為替市場に介入する必要はない。
 復興資金を日本円に両替したいと思っている人達だけを対象にして、日本銀行にできる金融支援がある。必要な資金もわずかである。

US$1=95円へ向かう

2016年05月03日 11時22分52秒 | Weblog
 中央銀行の存在意義とは何か? 19世紀・20世紀前半の教訓から、なぜ中央銀行は誕生したのか? それを考えてほしい。

 「市場」は長期的な視点に立てば、完璧にふるまう。しかし、短期的な場合はノイズを生むことがある。特に、AIが市場取引の中心に出てきたために、1m秒のような超短期間で市場が非合理的な動きをすることが増えた。

 中央銀行が設立されたのは、そんな市場のノイズを修正するためだったのではなかったか?
「長期的には市場は合理的にふるまう。しかし、短期的には市場は非合理的な動きをする。そして、社会に悪影響を及ぼす。バブル発生や世界恐慌など。短期の非合理的な市場の動きを抑制することで、社会を安定させる」ことが中央銀行に求められる役割ではないのか?

 「市場の動きに任せる」だけでは、中央銀行の存在価値はない。



2016年5月の外国為替市場には円高圧力がかかっている。
 主な要因は、熊本での地震と、その復興費用の流入である。 義援金、支援金、保険金、等々、repatriationと呼ばれる資金の流れがあり、円高圧力をかけている。

 特に東日本大震災後、地震保険の加入率が上がったこと。そして、今回は計1000回を超える余震の影響で全壊した住宅が多かったことから、保険金の支払額が膨らむと予想されている。


1997年の阪神大震災後に80円を超えて進んだ円高
2011年の東日本大震災後に75円台に進んだ円高
今回は、そこまでの円高は進まないと思う。

日本銀行が異次元量的金融緩和を継続して、年間80兆円の資金を市場に供給している。円資金は国内市場に余っている。また、マイナス金利導入で円安に市場が向いている。
 そのため、中立的な為替水準が110円前後まで円安に振れていると考える。

 その上で、地震による復興資金の流入を考えると、最大で15円程度の円高が進むのではないかと考える。つまり、対米ドルで95円台まで円高が進む可能性が高い。

 この「95円」って数字は天変地異(地震)の影響で市場が極端に振り回される場合の「最大値」である。当然ながら、「長期的に合理的な為替水準」ではない。

 つまり、中央銀行が設立された目的が「市場の短期的な暴走を抑制する」ことであるならば、為替介入をして極端な短期的円高の進行を抑制するべきだ。
 多くの人は、そう考えている。

 そのため、4月28日に日本銀行が「追加緩和政策を見送った」だけでなく「復興支援の金融政策を発表しなかった」ことに失望した人が多かった。それが、1000円を超えるNikkei225の暴落、5円を超える円高につながっている。



 求められているのは、「復興支援としての金融政策」である。「為替市場に介入」する必要は全くない。米国からの非難を抑えることもできるだろう。
 日本銀行の金融政策決定会合以前のブログにも具体策を書いたが、別のブログに繰り返し書きたいと思う。