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オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

東京オペラプロデュースの「エトワール(星占い)」

2019-09-16 10:28:24 | オペラ
9月15日(日)の昼に、新国立の中劇場で東京オペラ・プロデュースの「エトワール(星占い)」を見る。ダブル・キャストによる土日マチネーのみの二回公演。15時開演で、20分と15分の休憩を挟み、終演は18時5分だった。場内はほぼ満席。見たところ声楽関係者が多い印象。中劇場で額縁舞台形式でオケピットを作る時には1~6列ぐらいをオケピットにすることが多い様だが、東京オペラプロデュースの公演では、いつも10列目までつぶして、舞台を少し前にせり出した形で上演されている。中劇場はフルフルに入って千人程度のキャパだろうから、これだけつぶすと800人ぐらいの収容か。舞台がせり出しているので、見やすいのはありがたいが、2階席の後方からは少し見にくいかも知れないという気もする。

中劇場は演劇用の設計で、台詞が聞き取りやすいように残響時間は短くなっているので、コンサート・ホールに比べると歌でもオケでもストレートに音が聞こえてごまかしがきかないので、歌手にはシビアだろう。おまけに、この中劇場は音響に問題があるようで、場所によっては音が聞き取りにくいことで定評があるようだ。今回の公演はオペレッタ形式で、歌はフランス語だが台詞は日本語という公演形式なので、台詞が聞き取りやすいのはありがたかった。

この「エトワール」というのはシャブリエのオペレッタで、オッフェンバックの作ったブフ・パリジャンで初演された作品なので、オッフェンバック流のおふざけが多い作品だ。話は星占いに頼る無能な王様が世継ぎを作るために隣国から姫を貰って妻にしようとするものの、その姫は行商の若者と恋に落ちて駆け落ちするというだけの話。話の展開に新鮮味はないが、音楽は美しい歌が多く堪能できる。原作をフランス語で読んだわけではないので自信はないが、恐らくは当時の社会状況を前提とした風刺に満ちていて、王政を批判したギャグが沢山あったのではないかという気がする。

初演は1877年で、第二帝政も終わり、第三共和政に移ってしばらくたった時期だから、王政批判は何の問題もない時期だ。恐らくはそうしたギャグは現在では通じないので、削除して少し現代的な笑いのネタを盛り込もうとしたのだろうが、今回の公演では必ずしもうまくいっていない印象だった。

歌は皆それなりに歌っていたが、声量の点ではもう少しあると良いという印象。これは日本人全体の問題だから、ないものねだりをしても仕方がないか。オケは飯坂純指揮による東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団で、序曲の出だしを聴いたとたんにがっかりするような音の貧しさ。編成はそれなりにきちんとしているが、音に厚みがないし、特に管楽器の粗が目立ってしまう。東京には実力のあるオケも沢山あるのだから、もう少し何とかならないかという気もする。

その点はいつも気になるのだが、それでも毎回公演に足を運ぶのは、他の団体では決してかからない珍しい演目を上演してくれるからだ。今回の公演も僕自身は初めて観る作品で、まあ、大いに楽しんだ。東京オペラ・プロデュースにはこれからも頑張って欲しいと思う。

雨が降りそうだったので、まっすぐ帰宅して家で食事。エビのアヒージョやサラダ、パエージャなどを作って食べる。飲み物はカヴァ。