劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

「ペテン師と詐欺師」

2019-09-03 10:44:35 | ミュージカル
9月2日の夜に新橋演舞場で「ペテン師と詐欺師」を観る。2005年にブロードウェイで上演されたミュージカルで、ブロードウェイでは1年半ぐらいロングランしたので、それなりのヒット作品。18時30分開演で30分の休憩を挟み終演は21時35分頃だった。平日の夜で、勤め帰りの人も多く見受けられ9割以上の入りだった。松竹の製作で、新橋演舞場での公演だが、劇場の雰囲気がなんとなく歌舞伎ムードなのでミュージカルとはちょっとそぐわないかなという感じもした。

話の内容はリヴィエラを舞台に、詐欺師たちが金持ちを騙して金を巻き上げようと知恵を凝らす。詐欺師たちは相手の望むものを見抜いてその幻想を与えるという知的なゲームのように騙そうとする。二人の詐欺師がカモに狙いを付けて騙し合いの技術を競うが、騙しているつもりが騙されるという展開だ。

同名映画作品のミュージカル版で、その映画は1960年代に作られたマーロン・ブラントとデイヴィット・ニーヴンの競演した「寝室ものがたり」の再映画化。何度も取り上げられるぐらいだから、コメディとしての劇は面白くて楽しめる。一方、ミュージカルだから音楽の出来が気になる。作曲のヤズペクは昨年の「迷子の警察音楽隊」でトニー賞を取ったのだが、2005年に書いたこの作品は音楽が弱い気がする。それでも、ヤズペクは小さなときからチェロを習っていたということで、オケにはヴァイオリン3本とチェロ1本の弦楽器が入っていて、ホルンも使うなど、ロック一辺倒ではなく、昔風のサウンドも出していた。

コメディだから時事的なネタなども多いので、翻訳すると面白さがあまり伝わりにくい部分もあると感じたが、まあうまくまとめた印象。しかし、全体的に歌が弱く、もう少し何とかならないものかと感じた。2005年の作品だから大統領だったジョージ・ブッシュを皮肉る台詞も出てくるが、今だったらドナルド・トランプをからかう台詞になるのだろう。

翻訳が難しいなと感じたのは、医者に化けた詐欺師が歌う内容が「ヒポクラテスの誓」を立てた医者だと強調するくだりで、日本語では「ヒポクラテス」の語が全部は入らないため略されていた。これなどは、日本ではあまり知られていない言葉だし、翻訳の苦労がしのばれる。普通のドラマよりも、喜劇の翻訳は本当に難しいと思った。

21時40分頃に劇場を出て、有名な料亭の金田中の前を通って帰ったが、未だ時間が早いためか、黒塗りの迎車は並んでいなかった。月曜日の夜で休みの店が多かったので、家に帰って軽い食事。先日作っておいた餃子を食べる。おいしい紹興酒がなかったので、ボルドーのソーヴィニヨンブランの白ワインを飲んだ。