予て、ネットを賑わす「ネット右翼(ネトウヨ)」とは何者か、どうして蔓延するのか知りたいと思っていた。
本書はその疑問を
①物理的条件、つまり、ネットインフラの急速な発展・整備
②思想的背景、つまり、戦後日本の民主主義の脆弱性
の二つの側面から解き明かす。
つまり、ネットのブロードバンド化は、後発の高齢ユーザーが Youtube や「X」などに投稿された右翼的コンテンツに触れることを容易にした。
彼らは、時間的にも経済的にも生活をエンジョイできる層だが、思想的にはノンポリで過激な思想に染まりやすい。
他方、我が国の経済的・政治的ポテンシャルの低下という未体験ゾーンへの突入は、彼らの焦燥感に拍車をかける。
結果、中には排外主義~在日(外国人)、身障者、女性、子ども、経済弱者などに対する虐め~を伴った暴走者さえ現れるようになった。
著者によれば、彼らの総体は概ね、2百万人と見込まれ、全人口対比では2%にも満たない存在である。
従って、当面、彼らによって社会秩序が大きく棄損されることはないが、実態を正しく認識して置くことが必要である。中央新書、223頁。ご一読をお勧めします(お勧め度:★★★)。