アーバンライフの愉しみ

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平野啓一郎著「マチネの終わりに」

2019年04月25日 | 読書三昧

芥川賞作家の平野氏が2016年にリリースしたベストセラー(20万部)。
2015年3月~16年1月毎日新聞連載、403頁の大作。

イラク戦争(2003年)から東日本大震災(2011年)までの激動の時代を生きた天才ギタリストと国際ジャーナリストが、東京、長崎、パリ、バグダッド、ニューヨークなどを舞台に繰り広げるラブストーリー。

愛とは、人生とは、過去は書き換えられるのかなど、人生の根源的問題にも果敢に挑戦した意欲作。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)

蛇足:AMAZONの書評欄にあった次の記述に共感した。

「400ページ余りという、決して短くはない小説だが、音楽・文学・映画・アートなどに関する膨大な知識と、ユーゴスラビア紛争・イラク戦争・欧州難民危機・テロリズム・リーマンショック・東日本大震災などの世界が直面する諸問題を縦糸やら横糸に絡めながら多層的に展開する物語を思えば、よくこれだけのマテリアルをこれだけの分量に収めたものだと感心してしまう。そして何より凄いのは、それらのトピックがただ単に小説の時代背景として配置されているのではなく、二人の関係性を左右する大きな要因として、ストーリーと密着した形で機能し、描かれてゆく点にあるのだと思う。

読者にはすべての情報が与えられ、いわば神の視点から登場人物たちを眺めるような構造になっていて、彼らの悲劇的なすれ違いがどんな運命を辿るのか?ということが一番の興味となって読み進めていくことになるので、必然エンディングは重要になるのだが、(もちろん詳しくは書かないが)これ以上だと白けてしまうし、これ以下だとあまりに切なすぎるという、ギリギリのところで、平野啓一郎はこれしかない!という最高の和音を奏でてみせる。それは読む者の心のなかでいつまでもいつまでも止むことなく響く。」
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