夏と言えば恐怖映画。そして子供向き映画。映画館だけではなくテレビの洋画劇場でも、僕が学生の頃までは、夜更かしの出来るこの季節、「ドラキュラ」や「半魚人」、「地球最後の日」などが頻繁に放送されていました。最近はスタジオジプリの作品が持てはやされているようです。そこで思い出したのが、映画「奇跡の人」、原題“The Miracle Worker”です。皆さんはご存知ですか?
子供の時この映画のチラシを初めて見た時は、僕は「恐怖映画」だと勘違いをしました。題名の「奇跡の人」や、オスカー像よりも、この上半分の白黒写真のインパクトが大き過ぎたからです。監督のアーサー・ペンは、「逃亡地帯」「俺たちに明日はない」「左ききの拳銃」の名監督。熱病により、目も見えず、耳も聞こえず、言葉も話せなくなった三重苦の少女ヘレン。そこへ、自身も盲目を克服したという女教師アニー・サリバンが現れ、光を失った彼女に「言葉」という光を与えるべく努力を重ねていく名作で、アカデミー賞主演女優賞アン・バンクロフトと助演女優賞パティ・デュークをダブル受賞しています。この作品を僕は夏休みに観ました。
ちなみに、この「奇跡の人」“The Miracle Worker”は、誰のことか分かりますか?ヘレン・ケラーのことだと思っていませんか?これはヘレンの先生であるアニー・サリバンを指しています。“The Miracle Worker”は、何かに対して働きかけて奇跡を起こす人のことです。マサチューセッツ州のフィーディングヒルズには、彼女の記念碑がありました。ここは、アニー・サリバンの生地です。
僕が子供だった頃に比べて今では、ヘレン・ケラーやアニー・サリバンについて知らない人が多いことに驚きます。我々は一体何をどれだけ知っていて、何について議論しているのだろうかと、考えさせられることが最近多くなりました。
さて、ヘレン・ケラーは3度来日しているのですが、そのことを知っている方はいますか?彼女が秋田犬を飼っていたことも知っていますか?
1937年にヘレン・ケラーは日本の各地を講演で回っています。その際に、昭和天皇に拝謁もしています。日本で「忠犬ハチ公」のことを知ったヘレンが、秋田犬が欲しいと言ったことから、秋田署の巡査・小笠原一郎氏が飼っていた秋田犬を彼女にプレゼントしました。この犬の名前が何と「神風」です。しかし、神風はアメリカについてすぐに死んでしまったので、小笠原氏は「神風」の兄「剣山」を彼女に再度プレゼントしています。
“If ever there was an angel in fur, it was Kamikaze. I know I shall never feel quite the same tenderness for any other pet. The Akita dog has all the qualities that appeal to me… he is gentle, companionable and trusty.”
ヘレンが神風について語った言葉です。“毛皮にくるまった天使がいるならば、それは神風。同じ優しさを他のペットに感じることは絶対にありません。あの秋田犬は私の心に訴えかける資質を全て持っています。神風は優しく、気持ちが通じるし、信頼できるの。”