「ですから、ぜひとも、私が去った後いつでも、あなたがたがこれらのことを思い起こせるようにしておきたいのです。」(Ⅱペテロ1:15新改訳)
Ⅱペテロ書は、地上で彼が認(したた)めた最後の書簡である。その強調点は、キリストの再臨と新しい天地の出現が近づいていること、御国に入るための備えを油断なくしておくことであった。理由はペテロ自身の殉教(じゅんきょう)のときが刻一刻(こくいっこく)と迫っていたからであった。▼伝承(でんしょう)によれば、彼は妻とともに、ローマで死刑に処せられた。それに基づいて書かれた小説がクォ・バディスである。当時、教会を取り巻く情勢は、外部からローマの弾圧が次第に強くなり、内から異端やにせ教師が福音に対して異を唱え始めつつあった時で、正しい信仰を堅持(けんじ)させようとするペテロの真剣さが、ひしひしと感じられるのはそのためだ。▼私たちの生きる現代も、ペテロ当時と変わらないことを痛感させられる。しかし反面、神の国がまちがいなくそこまで来ているのだから、大きな喜びと希望を抱かずにはいられないことは、さらにまさる事実である。