しげる牧師のブログ

聖書のことばから、エッセイを書いています。
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とつぜん幕が裂けて

2020-06-22 | エッセイ

私はユダヤ教の祭司をしています。そう、あの日は除酵祭の一日目、ローマの暦でいえば金曜日だったのですが、神殿の中に入って香を焚くことになり、私たちの組ではくじを引きました。すると、なんと私が当たったではありませんか。驚くと共に感激しました。だって生まれてはじめての経験でしたから・・・。▼仲間が皆で祈っている中を、私は聖所の内部へ恐る恐る入りました。生まれて初めて見る神殿内部、右手にパンの机、左手には総金の燭台、正面には香壇がありました。もちろんその後ろには隔ての幕が下がっています。そうですね、時刻はすでに昼を過ぎ、3時に近づいていたと思います。それはもう、おごそかさに満ちた聖所内の務めですから、緊張しきっておりました。お祈りしつつ、香壇の上に香をくべていたのはもちろんです。▼ところが、急に石造りの建物がゆれたんです。あ、地震だなとおもいました。堅牢でみごとな石づくりの建物ですから心配はありません、でも灯が燃えていますし、パンも机にのっていますから、注意をしていました。ところがそのとき、たいへんなことがおきました。正面に下がっている隔ての幕が、上から下まで真っ二つに裂けたんです。天井までは10キュビトありますし、立派で厚い壮麗な幕ですから、いくら地震とはいえ裂けるような物ではありません。それがひとりでに、まるで神がお裂きになったように、上から下に向かって裂けたんです。驚いたのなんのって・・・。腰が抜けるかと思いました。奥の至聖所に絶対入ってはならない、聖なる神に撃たれて死ぬ、といわれていましたが、その内部が裂けた幕の向こうに見えたのですからね。▼ともあれ、時間になったので外に出て、組の者たちに知らせましたが、大騒ぎになったのはもちろんです。あの日、聖所内で起きた光景を私は一生忘れないでしょう。