【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「灼熱の魂」

2011-12-20 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


内戦の絶えない中東からカナダに逃れてきた母親が急死。遺書に導かれるまま彼女の過去を調べるうち、母親の凄まじい遍歴と自分たちの出生の秘密を知ってしまう姉弟の物語。
母親が混乱の生地、中東で経験する話は身も凍るようなものなんだけど、現実にありそうなところがなんとも恐ろしい。
私たちは中東の情勢にはまったく無知だけど、ああいう砂ぼこり舞う荒涼とした大地で憎しみ合う人々の姿を目撃すると、それだけでどんな恐ろしいことも起こり得る土地なんじゃないかと思ってしまう。
実際、この映画の中で母親が遭遇するのは、一片の躊躇もなく殺戮に手を染める人々の姿。
なかでも、バスに乗った一般人が襲われるシーン。命からがら助け出した幼子の行方は観るに耐えられない。
ロングで撮った映像が目に焼き付いて離れない。
あの過酷な紛争が、自分たち親子にギリシャ悲劇さながらの残酷な運命を残していると知ったときの姉弟の衝撃。
けれど、いくらでも大仰に描ける波乱万丈な話を、カナダのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は決して扇情的には描かない。
冷静な、けれど濃密なまなざしで見つめるのは、世界の不条理を一身に背負ってしまった家族の肖像。
そして、開かれる母親の手紙、差し出される遺書。
それでも、愛は残るという確信。
母親の謎を追うというサスペンス仕立てで紡がれる物語は、決して観客の目をそらさせない。
なんとも強烈な日本題名だと思ったけど、最後には納得しちゃう。
文字通り、魂を鷲づかみにされる映画だった。



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2 コメント

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お久しぶりです。。 (rose_chocolat)
2012-02-16 07:11:14
魂をわしづかみ、ぴったりな表現ですね。
これ今年になってから観ましたが、かなり気に入ってます。
■rose_chocolatさんへ (ジョー)
2012-02-23 21:57:59
こちらこそ、お久しぶりです。
「灼熱の魂」、おおげさなタイトルだなあと
思いましたが、そのとおりの映画でしたね。

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