伊坂幸太郎の小説と中村義洋監督ってほんとに相性がいいんだな。
それに出演は濱田岳という伊坂&中村映画になくてはならないキャラクター。鉄壁の布陣だわ。
今回はなんと!彼が主役。身長も容貌もぱっとしない存在は、今回の物語にぴったりだ。
この原作・監督・出演のゴールデン・スランバーならぬゴールデン・トライアングルが醸し出す伊坂&中村&濱田ワールドって、観ていてほんとうに心地いい。
ゴールデン・スランバーって黄金のまどろみっていう意味だけど、彼らの映画自体ゴールデン・スランバーをもたらすような心地よさに満ちている。
前回の「ゴールデン・スランバー」から一転、今回は空き巣稼業という小じんまりした世界の話で上映時間も68分。
それだけになお一層愛すべき小品に仕上がっている。
「ポテチ」という軽いタイトルどおり、構えは小さくなったけど、あいかわらず会話の妙味や、関係者たちが微妙にずれながら絡んでいく過程や、物語の種明かし具合がいちいち心地いい。
恋人との出会い、親分との間抜けな会話、仕事の先輩の佇まい。
すべてが絶妙に絡み合って、ラストへ落としこまれていくのは、いつも通り。
今回は、そこに母親への思いが加わってくる。
石田えり。彼女の存在が重しのように効いている。
ある意味、彼女が主役でもある。
すべてを知っているような、知っていないような、母親ならではの測りがたい表情が、この地面から足を浮かせたような軽妙な映画を地上につなぎとめる。
しょせんホラ話なんだけどね、っていう映画の世界観を壊すことなく魂を吹き込んだ。
って、ずいぶんオーバーな表現ね。否定はしないけど。
無邪気なような、でも心の内には何かを秘めているような彼女の演技が逆に映画をひきしめたことは事実だ。
なるほど。
「サッドヴァケイション」の母親役に匹敵するな。
っていくらなんでも、それは飛躍しすぎでしょう。
ポテチン。