【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「サッド ヴァケイション」:宮下公園バス停付近の会話

2007-10-17 | ★池86系統(東池袋四丁目~渋谷駅)

あそこにチラッと見える青いシートは何?
まあ、なんというか、この公園に住んでいる人たちの住まいだな。わけあってふつうの暮らしができない人たち・・・。
て、いわゆる、Homeless?
そうとも言うな。
そうとしか言わないんじゃない?
それはともかく、青山真治の10年くらい前の映画に「Helpless」っていう佳作があって、その中で主人公の浅野忠信は母親に逃げられ父親にも死なれ、続編は「Homeless」っていう映画にでもなるのか、と思っていたらはずれた。
「サッド ヴァケイション」ていう映画になった。
映画の「サッド ヴァケイション」では、わけあってふつうの暮らしができない人たちは、北九州の運送屋に住み込みで働いている。
その運送屋の主人が中村嘉葎雄、妻が石田えり。実は「Helpless」で家族を捨てて逃げた母親がこの石田えりで、それを偶然知った息子の浅野忠信が彼女に復讐するために、運送屋に入り込む。
「Helpless」では、人里離れた一軒家の喫茶店で父子の事件が起こったが、10年経ったこの「サッド ヴァケイション」では、運送屋が舞台の母子の話になったってわけだ。
それだけじゃなくて、この運送屋には、同じ青山真治の映画「Eureka」でバスジャックに遭った宮崎あおいも住み込みで働いている。
なんだか複雑だが、中心になるのは母親の石田えりと息子の浅野忠信の駆け引きだ。
母親の石田えりは、家を守ることしか念頭になく、息子の浅野忠信はとうに家なんか捨てたと思っている。
心はHomelessってやつだな。
ところが、この石田えり、「母は強し」ってやつで、もう一人の自分の子どもが殺されようが、殺したのが息子の浅野忠信だろうが、いっこうに動じない。誰だろうが、自分の家を継ぐ人間がいればそれでいいじゃん、て泰然自若としている。
ほんとに母はそこまで強いのかどうか知らないけど、あの石田えりの堂々とニヤつく顔を見ると、正直、背筋がぞっとする。
ふふふ、女は恐ろしい生き物なのよ。
お前に言われると、恐ろしいというより、気持ち悪いけどな。
悪かったわね。
いまや人気絶頂のオダギリジョーが脇役で出ているんだが、微妙な立ち位置だったな。
住み込みで働いてる従業員の一人なんだけど、ところどころでボソッと何か意味深なことを言うのよね。よくわからなかったけど、結構大事な役柄だったのかもしれない。
そうかと思うとヤクザに追われて宮崎あおいのひざの上で震えたりして・・・。
結局、男は女が守らなきゃダメってことよ。
そしてあの人を食ったラスト。
それでも女は生きていく。やっぱり、女は強し、っていう終わり方なんじゃない?
それが原因であそこに逃げ込んだ人たちもいるんじゃないのか。
あそこって?
青いシートの中だよ。


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宮下公園バス停


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