【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「人生万歳!」

2011-01-11 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)

ウディ・アレン、久々のニューヨークもの。
「アニー・ホール」や「マンハッタン」の頃に戻ったようで懐かしい。
自称、ノーベル物理学賞にノミネートされたこともあるというIQの高い男のところへ偶然、南部出身の小娘が転がり込んでくるところから始まるドタバタ劇。
この男、理論的で懐疑的で分析的で厭世的でお喋り。かつてならウディ・アレン自身が演じたであろう役柄。さすがに自分で演じるには年をとったと悟ったのか、別の俳優が演じている。ウディ・アレンほど自虐的に見えない微妙な味わいの違いが、昔ながらの語り口にちょっと新鮮な風を送っている。
こんな厄介な男を好きになる女性なんているのかと思ったら、どこか頭の弱そうな娘が、妙に気に入って惚れちゃう。
おじいちゃんと孫くらい年の差があるのにね。
まあ、物珍しかったっていうことだろう。
男のほうも邪険に扱ったりするんだけど、内心では結構気に入ってたりする。
いるんだよなあ、「俺は孤独を愛している」とか言いながら、実は誰かにかまってもらうのを待っているようなひねくれた男。
あなたみたいに?
俺は孤独を愛しているわけじゃない。孤独に愛されているだけだ。
そんな男の住まいに、彼女の両親も訪ねてきたりして、みんなのニューヨークかぶれ物語が始まる。
ウディ・アレンにしてみれば自家薬籠中の町、ニューヨーク。肩の力を脱いで軽妙洒脱に撮っている。そのぶん、彼の毒もいい具合に薄まっている。
かつてのニューヨークものには、どこか侘しい風情が漂っていたけど、それが抜けて口当たりの軽いコメディに変化している。
年を取って悟りを開いたか。
最後なんて、ちょっと強引だけど、思いっきりハッピーエンドだもんね。
結論が「なんでもあり」なんてな。
これが、もうすぐ休館になる恵比寿ガーデンシネマのラストを飾る作品になるとは、ふさわしいような、ふさわしくないような…。これから、ウディ・アレン作品はどこの映画館で観られるのかしらね。
どこかで観られるさ。世の中、なんでもありだ。





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