【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」:江東車庫前バス停付近の会話

2009-01-24 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

なんだ、この赤いバスは。共産党か、ソ連か。
あのねえ、いまどきソ連なんて言わないの。言うならロシア。このバスとは何の関係もないし。
待て待て。ソ連・イコール・ロシアってわけじゃあないだろ?たとえばチェチェンなんてソ連ではあったけど、今はロシアじゃなくて別の国だ。
そうね。ロシアと戦争しているんだもんね。
「チェチェンへ アレクサンドラの旅」は、そのチェチェンに駐屯するロシア軍の孫を訪ねていくアレクサンドラという名の老婆の話。
齢80歳。老婆が主人公の映画っていえば、題材はちょっと違うけど「やわらかい手」なんていう秀作もあったわね。
マリアンヌ・フェイスフル主演のフランス映画だろ。題材はちょっと、というより、全然違う。片や戦争という硬派な話、片や風俗という軟派の話。
でも、どちらの映画も主人公に圧倒的な存在感があるという意味では通じるところがあるわよ。
ああ、この映画の主人公、ガリーナ・ヴィシネフスカヤもマリアンウ・フェイスフルに劣らない存在感を示すと思ったら、世界的なオペラ歌手なんだってな。
それにしては、孫を気遣う庶民っていう地味な役柄がぴったりはまっていたわ。
天才は、何歳になっても、何の役をやっても天才なんだな。
彼女の訪ねる砂ぼこりの駐屯地にいる軍人たちは、男というより少年のように彼女を慕っていく。
偉大なる母性だ。
男たちは戦うことしか知らないが、女たちはすぐ姉妹になれる、なんていう戦争批判の言葉も、思わず納得しちゃうわよね。
ロシアの老婆とチェチェンの現地の老婆が心を通わせるシーンか。
チェチェンの破壊された建造物が映画の背景になっているからよけい痛ましいことばに聞こえる。
「日本の老女のことばに、大事なのは理性だというのがある」なんていうようなセリフも出てきたけど、日本の老女って誰なんだろうな。
わからないけど、日本にも偉大な老女がいるってことよ。老女は世界を救う。
他にも「破壊ばかりで建設はいつ学ぶの?」とかグサリとくるセリフがたくさんあって、考えさせられる。
全編セピア色を基調にした画面で静かに語りかけてくるような映画よね。こんな視点の戦争映画、いままでにあったのかしら。
戦争映画と言いながら、戦闘シーンがないのがちょっともの足りなかったけどな。
ああ、男はこれだからダメなのよ。ねえ、アレクサンドラ?




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ふたりが乗ったのは、都バス<錦25系統>
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