Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

藤岡幸夫/東京シティ・フィル

2021年02月14日 | 音楽
 藤岡幸夫指揮東京シティ・フィルの2月の定期は、全席完売になった。ほかのオーケストラで(同じく50パーセント規制の配席ながら)空席が目立ち、寂しい会場風景だったのとは対照的だ。

 1曲目はウォルトンの「スピットファイア」前奏曲とフーガ。わたしは初めての曲だ。スピットファイアとは第二次世界大戦のときのイギリスの戦闘機の名前。子どもの頃に無邪気にプラモデルを作って遊んだ記憶がある。同曲はその名前をとった映画音楽から演奏会用に編まれた曲。映画は1942年公開とあるので、戦意高揚のための映画だったのだろうか。いかにもそれらしく活気のある場面が目に浮かぶ音楽だ。演奏もテンションが高くて、単純に楽しんだ。

 2曲目は菅野祐悟(かんの・ゆうご)(1977‐)の新作「サクソフォン協奏曲」。サクソフォン独奏は須川展也。菅野祐悟はわたしには未知の作曲家だったが、映画やテレビドラマの音楽では有名な人らしい。テレビを見ないので知らなかったが、2014年のNHK大河ドラマ「軍師官平衛」の音楽や、2018年の連続テレビ小説「半分、青い」の音楽を担当したそうだ。

 今回の新作「サクソフォン協奏曲」は全3楽章からなる堂々とした曲だが、通常のクラシックの協奏曲とは趣向が異なる。一言でいうと、エンタメ系の音楽(けっして悪い意味ではない)とシリアスな音楽とのハイブリッドな作品。映画音楽を思わせる甘美な音楽と、魂の底から吹き上げる叫びとをパッチワークのように混合した音楽だ。わたしは第2楽章の後半と第3楽章の後半に現れる、一定のリズムパターンを繰り返すなかで高揚する音楽にとくに惹かれた。

 須川展也の独奏は、さすがにサクソフォンの第一人者というべきか、この新作を掌中に収めていることはもちろん、聴衆を喜ばせるエンタテインメント性と、オーケストラを鼓舞するパワーとを兼ね備えていた。

 3曲目はホルストの組曲「惑星」。なんだか久しぶりに聴いた気がする。第1曲「火星」が激烈な演奏だった。わたしにはコロナ禍で苦しむ人類の怒りの爆発のように感じられた。一転して第2曲「金星」では、オーケストラの音が平板にならずに、微妙な息づかいをもって推移するのが好ましかった。以下、各曲のコメントは省くが、どの曲もけっして雑にならずに、ていねいに性格づけられていた。

 藤岡幸夫が東京シティ・フィルの首席客演指揮者に就任してから2シーズンが経過するが、オーケストラとしっかりかみあっているように感じられた。
(2021.2.13.サントリーホール)

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