Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ボッティチェリとルネサンス展

2015年04月29日 | 美術
 「ボッティチェリとルネサンス展」。最初そのチラシをみたときは驚いた。昨年秋の「ウフィツィ美術館展」でボッティチェリを堪能したばかりだったからだ。日本では見る機会が稀なボッティチェリを2年連続で見ることができるなんて――。

 「ウフィツィ美術館展」のボッティチェリも充実していたが、今回も充実の内容だ。中でもフレスコ画の「受胎告知」(※)は243㎝×555㎝という大きさ。大天使ガブリエルの緊張した表情が凛々しい。ダイナミックなその動きは、画面の巨大さに負けていない。一方、聖母マリアは一般的な恭順の表情だ。

 もう一つのフレスコ画「キリストの降誕」は、後年キャンバスに移行されたもの。画面の緊密な構成では「受胎告知」を凌ぐ。保存状態がよいのか、色彩が瑞々しい。本展の中で好きな作品を1点挙げるなら、わたしはこの作品だ。

 以上2点に加えてもう1点、テンペラで描かれた「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」(※)が、わたしにはベストスリーだ。本作の色彩の美しさは際立っている。修復が成功したのだろう。聖母の表情もいいが、聖ヨハネの美少年ぶりが現代的だ。残念ながら、本作は5月6日までの限定公開だそうだ。

 上記の各作品の制作年は「受胎告知」が1481年、「キリストの降誕」が1473‐1475年、「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」が1477‐1480年頃。ボッティチェリ(1445‐1510)が脂の乗りきった頃だ。修道士サヴォナローラの影響を受ける前の時期。結局この頃のボッティチェリが一番いいのではないか。

 ボッティチェリの作品は他にも何点か来ている。中には工房作品もあるが、真筆も多い。1460年代後半の作品はどれも甘く美しい。好感度抜群だ。師のフィリッポ・リッピ(1406‐1469)の影響がよくいわれるが、まさにそうだろう。師の没後の作品「ケルビムを伴う聖母子」(1470年頃)(※)にもその余韻が感じられる。

 ボッティチェリ以外の作品も、もちろん来ている。その中にフラ・アンジェリコ(1395頃‐1455)の小品が2点あった。「聖母マリアの結婚」(※※)と「聖母マリアの埋葬」。初期ルネサンスの淡い情感がなんともいえない。

 これらの2点はウフィツィ美術館所蔵の祭壇画「聖母戴冠」のプレデッラ(下部の小型の絵)の一部だそうだ。「聖母戴冠」はフラ・アンジェリコの代表作の一つだ。
(2015.4.27.BUNKAMURAザ・ミュージアム)

(※)の作品の画像

(※※)の作品の画像

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