Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヤノフスキ/N響

2024年04月15日 | 音楽
 ヤノフスキ指揮N響の定期演奏会。1曲目はシューベルトの交響曲第4番「悲劇的」。前日に下野竜也指揮日本フィルで同じくシューベルトの交響曲第3番を聴いたので、どうしても比較してしまう。両曲は同時期の作品だ。またN響も日本フィルも同じ12型の編成。それなのに出てくる音楽は対照的だった。

 下野竜也指揮日本フィルが、軽く明るい音でチャーミングなシューベルトを聴かせたのにたいして、ヤノフスキ指揮N響は、重く渋い音でがっしりした骨格のシューベルトを聴かせた。同時期の作品とは思えない違いだ。好みの点ではどうかといえば、それは人それぞれだろうが。

 シューベルトは第4番の後で小ぶりで愛らしい第5番を書いたので、下野竜也指揮日本フィルの演奏スタイルのほうがシューベルトの創作のうえで連続性がある。一方、ヤノフスキ指揮N響の演奏は、ヤノフスキの生きた時代の演奏様式という気がする。それはいまではだれもやらなくなったが、一昔前のLPレコードで聴いた巨匠たちの演奏スタイルだ。堂々とした威容を誇るシューベルト。ヤノフスキはそれをいまでも保持する。

 ヤノフスキは1939年生まれ。今年85歳だが、音楽はまったく緩んでいない。隅々まで堅固に構築されている。今回はコンサートマスターにドレスデン・フィルのコンサートマスターのヴォルフガング・ヘントリヒが客演で入った。ヤノフスキは最近までドレスデン・フィルの首席指揮者を務めた。ヤノフスキの演奏スタイルを熟知するヘントリヒがコンサートマスターに入ったことも、今回の演奏では大きな役割を果たしただろう。

 2曲目はブラームスの交響曲第1番。N響はもう何度演奏したかわからない曲だが、ヤノフスキはそれを自分の演奏スタイルで演奏させる。緊張したこわもての演奏だ。笑顔を見せないヤノフスキの表情さながらの演奏だ。

 聴きどころの多い曲だが、その代表例ともいうべき第1楽章冒頭の序奏部と第4楽章冒頭の序奏部が、たっぷり溜めて演奏するのではなく、比較的あっさりと進む。物足りないといえばそうかもしれないが、音楽全体の形は崩れない。むしろ力点はそれぞれ主部に入ってからのほうにあると気付かせられる。

 よく聴くと、意外にテンポを動かす。大きく動かすことはないが、小さなギアチェンジはけっこうある。それは音楽の段落の変わり目に入れることが多い。そのギアチェンジがヤノフスキの身にしみこんでいる。微動だにしないヤノフスキの演奏様式を感じる。それを巨匠の演奏と尊ぶ人も多いだろう。
(2024.4.14.NHKホール)

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