Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴァイグレ/読響

2022年12月13日 | 音楽
 ヴァイグレ指揮読響の定期演奏会は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番(第1番ではない)とタネーエフの交響曲第4番という渋いプログラムだった。集客は難しいだろうと思ったら、チケットは早々に完売になった。ソリストの反田恭平人気らしい。

 反田恭平の演奏はすごかった。すさまじい熱量だ。ピアノ協奏曲第2番は第1番の陰に隠れて、演奏機会は多くはないが、実際に演奏してみると、意外に演奏効果の上がる曲だ。だが、それにしても、反田恭平の演奏は圧倒的だった。(本来はこういう言い方は避けたいのだが、とっさに適当な表現が見つからないので、止むを得ずいうが)従来の日本人演奏家のスケールを一回り超えている。反田人気が沸騰するゆえんだろう。

 読響も反田恭平と堂々と渡り合った。第2楽章のヴァイオリン独奏はコンサートマスターの長原幸太。艶のある美音を聴かせた。またチェロ独奏は遠藤真理で、彫りの深い演奏を聴かせた。

 次のタネーエフの交響曲第4番はめったに演奏されない曲だ。そもそもタネーエフってだれ?というのが正直なところ。澤谷夏樹氏のプログラムノーツによると、タネーエフはチャイコフスキーの弟子だ。それもたんなる弟子ではなく、「自慢の弟子」だったらしい。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第2番のモスクワ初演はタネーエフがピアノを弾いた(第1番のモスクワ初演もタネーエフがピアノを弾いた)。それだけではなく、チャイコフスキーがモスクワ音楽院の教授職を辞したとき、後任にタネーエフを指名した。そのタネーエフの代表作が交響曲第4番だ。

 演奏は豪快だった。オーケストラが大音量で鳴りひびき、ダイナミックに動いた。全4楽章で演奏時間は約42分(プログラム表記による)の大曲だが、演奏開始からテンションが高く、第4楽章にいたっては目をみはるばかりの力演だった。

 とりあえず演奏にはこれ以上望むべくもない気がするが、だからこそ(不遜を承知であえていえば)あまりおもしろい曲には思えなかった。演奏が終わったとき、演奏には惜しみない拍手を送ったが、曲からは心が離れた。

 だが、これは偶然だろうが、来年6月にはラザレフが日本フィルの定期演奏会でこの曲を振る予定だ。モスクワ在住のラザレフは、ロシアのウクライナ侵攻以来、来日が難しくなっているので、はたして来年6月に来日できるかどうかは不明だが、それは措くとして、もしラザレフが振ったらどうなるか、興味がわく。ラザレフが振るなら、それまでこの曲にたいする評価は保留にする。
(2022.12.12.サントリーホール)

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