Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

METライブビューイング「アマゾンのフロレンシア」

2024年02月07日 | 音楽
 METライブビューイングでダニエル・カタン(1949‐2011)のオペラ「アマゾンのフロレンシア」を観た。1996年にヒューストンで初演されたオペラ。甘く酔わせるメロディーがふんだんに出る。アリアあり二重唱ありアンサンブルあり。アリアの後には(観客が拍手できるように)ちゃんと間がある。今でもこのようなオペラが作られているのだ‥。

 前回のMETライブビューイングはアンソニー・デイヴィス(1951‐)の「マルコムX」だった。「マルコムX」は1986年にニューヨーク・シティ・オペラで初演された。前々回はジェイク・ヘギー(1961‐)の「デッドマン・ウォーキング」。2000年にサンフランシスコで初演された。今回の「アマゾンのフロレンシア」と合わせて、現代は多様なオペラが作られている。そのオペラの沃野を感じる。

 「デッドマン・ウォーキング」と「マルコムX」はシリアスなオペラだったが、「アマゾンのフロレンシア」はロマンチックなオペラだ。オペラ歌手のフロレンシアが、アマゾンの奥地のマナウスの劇場で歌うために、アマゾン川を下る船に乗る。フロレンシアはアマゾンで消息を絶った恋人を探している。船には、いさかいの絶えない中年夫婦、恋に臆病な若い二人、船長、そして現実世界と超常世界との仲介者のアルバロがいる。

 中年夫婦、若い二人そして消息不明の恋人を想うフロレンシアの三者三様のドラマが「愛とは何か」を問う。そこにアルバロが仲介するアマゾンの魔法的な世界が入りこむ。ドラマは幻想的になる。フロレンシアは恋人に再会できるだろうか。詳述は控えるが、その結末は(台本作者のマルセラ・フエンテス=ベラインがノーベル賞作家のガルシア・マルケスの教え子だからだろう)たしかにガルシア・マルケス的だ。

 演出のメアリー・ジマーマンはアマゾン川流域を舞台に再現した。目の覚めるようなピンク、青、緑などの原色が入り乱れる。ピラニアなどの魚をダンサーが踊り、イグアナや猿をパペット(人形)使いが操る。楽しい舞台だ。

 フロレンシアを歌うアイリーン・ペレスをはじめ、歌手はすべて高水準だ。上述したように、とにかく甘く歌うオペラなので、歌手が非力だと冗長になりかねないだろう。その点、さすがはMETだ。どの歌手も切れが良く、陰影が濃やかで、声が伸びる。わたしはこのオペラに感銘を受けたが、その最大の功労者は歌手たちだ。ヤニック・ネゼ=セガンの熱い指揮が歌手たちを支えたことはいうまでもない。

 このオペラはスペイン語だ。巻き舌のような独特の語感がある。METでスペイン語のオペラが上演されるのは約100年ぶりだそうだ。
(2024.2.5.109シネマズ二子玉川)

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