Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2018年01月20日 | 音楽
 読響の定期が行けなくなったので、名曲シリーズに振り替えてもらった。曲目はブラームスのヴァイオリン協奏曲、バッハ(マーラー編曲)の管弦楽組曲(抜粋)とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。

 ヴァイオリン協奏曲の独奏はイザベル・ファウスト。現代最高峰のヴァイオリン奏者の一人だろう。大きな音で鳴らすとか、強烈な表現を聴かせるとか、そんな個性を売り物にする人ではなく、むしろ淡々と弾くのだが、その存在感が抜きんでている。聴いているうちに、その存在感に引き込まれる。清々しい正統的な演奏。

 第1楽章のカデンツァに入るところで、ティンパニが強打された。すぐにヴァイオリンのカデンツァが始まる。その間もティンパニのロール打ちが弱音で続く。やがて弦楽器も入ってきて、コーダにつながる。終演後、プログラムを読むと、ブゾーニの作だそうだ(通常はヨアヒムの作が使われる)。ふだん馴染みのないカデンツァが使われると、こちらの意識が覚醒され、新鮮な緊張感をもって聴くようになる。

 アンコールが演奏された。シンプルで、あえていえばプリミティヴな曲。しかも短い。呆気に取られているうちに、あっという間に終わった。だれの曲だろうと、見当がつかなかった。帰り際に出口の掲示を見ると、クルターグの「サイン、ゲームとメッセージ」からドロローソとのこと。クルターグか!と納得した。アンコールにクルターグを弾くファウストの感性にあらためて感心。

 休憩後はバッハの管弦楽組曲の抜粋。マーラーの編曲。マーラーがアメリカで活動した晩年の作だそうだ。ストコフスキーのような豪華絢爛のショーピースではなく、まだバッハが一般に馴染みのなかった時代に、バッハ普及のために作られたものか。当時のニューヨークを想像しながら聴いた。

 最後はベートーヴェンの「運命」。きわめて充実した音が鳴る。引き締まった筋肉質の音。テンポは速め。インテンポ。けっして音を引き伸ばすことがない。一気呵成ということでもない。揺るぎのない音の構造。それが目の前を駆け抜ける。

 所々で金管楽器、そしてティンパニが、ある一音にクレッシェンドをかける。まるで閃光を放射するように。それが特徴といえる。音の運動性が増す。カンブルランが捉えるベートーヴェン像の一端か。

 カンブルランは退任まであと1年。別れを惜しむ1年が始まった。
(2018.1.19.サントリーホール)

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