Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

飯守泰次郎/東京シティ・フィル

2018年01月21日 | 音楽
 飯守泰次郎が振るブラームスの交響曲は聴いたことがあると、当然のように思っていたが、オヤマダアツシ氏のプログラム・ノートによると、少なくとも東京シティ・フィルの定期では、交響曲は初めてだそうだ。そうだとすると、わたしが聴くのも初めてなのかと、意外な思いがする。

 まず交響曲第2番から。冒頭に低弦が入ってくると、その厚みのある音が懐かしかった。飯守泰次郎が長年、東京シティ・フィルと積み重ねてきた音が、久しぶりに戻ってきたように感じた。飯守泰次郎は2012年3月に常任指揮者を退任した後は、年1回のペースで定期を振り、ブルックナーの交響曲で名演を重ねてきたが、最近は低調気味だった。だが、今回は調子がよさそうだ。

 飯守泰次郎の退任後、東京シティ・フィルは木管の若返りが進み、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの各首席奏者に優秀な若手が入った。それらの若手奏者が今回も大活躍だった。弦は、現在の常任指揮者の高関健が振ると、張りのある音がするが、飯守泰次郎が振ると、前述のように厚みのある音がした。

 演奏は熱演だった。東京シティ・フィルのいつものテンションの高さに、飯守泰次郎のがっしりした構築性が加わり、真摯な演奏が繰り広げられた。余計なものを削ぎ落した、自らの道を邁進する演奏だった。

 プログラム後半は交響曲第4番。これも名演だった。演奏スタイルは第2番と同様。第4番では、わたしは好きな割に、実演で肩透かしを食らうことがあるが、今回は手応え十分だった。とくに第4楽章パッサカリアは、彫りの深い演奏だった。フルートの首席奏者、竹山愛の、抑揚ラインが美しい、表情豊かなソロが光った。

 余談だが、第4番ではトランペットの1番奏者が代わった。どういう理由かは分からないが、わたしは第2番で1番を吹いた首席奏者の、そっとアクセントを添えるような、控えめな吹き方が好きなので、内心がっかりした。代わった奏者もうまかったが、あの首席奏者が吹いたら、金管セクション全体はどう聴こえたかと、空しく想像した。

 飯守泰次郎は、古巣に帰って、自分の思うような音楽ができたのではないか。新国立劇場でオペラを振っているときより、オーケストラと噛み合っているように思った。

 客席には空席が目立った。どうしてなのか、と気の毒になる。でも、その少ない聴衆は、熱い拍手を送った。
(2018.1.20.東京オペラシティ)

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2 コメント

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トランペット (こんにちわ)
2018-01-21 20:36:29
全く同感です
2番は首席の松木さん(この方めっちゃセンスあります)
4番は客演、なんで代わったんだろう???
良く鳴ってはいましたが
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トランペット (Eno)
2018-01-21 21:09:08
同じように感じた方がいらっしゃって、嬉しいです!
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