元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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未成年労働契約は労基法と民法のつながりで理解<未成年者による法定代理人同意の契約のみ認める>

2016-10-07 17:38:59 | 社会保険労務士
 未成年者の労働契約は、不利と認められる場合は、親権者等によって解約可能!!

労働基準法の条文を勉強していても、全体の流れが分かりにくいことがある。民法とのつながりがあって初めて全体の展開がはっきりするものがある。未成年者の労働契約においては、特にそうである。以下に順を追って説明したい。

 一般には、父母等の親権者や後見人という法定代理人にあっては、未成年者本人に代わって、当然のごとく契約を締結できるが、労働契約だけにあっては、(1)労基法58条1項において、これら親権者や後見人(=法定代理人)が、未成年者に代わり契約を結ぶことは禁じられている。
 
 一般的な契約にあっては、未成年者にとって、法定代理人(親権者・後見人)が契約を締結することはありがたいこととなるが、これが労働契約で禁じられているのは、親等が子を食いものとすることがないとは限らないからである。

 では、法定代理人の代理が認められないとすると、あと残された締結方法は、未成年者本人が労働契約を締結することになる。労働基準法で法定代理人が労働契約を締結するのはダメというのであれば、未成年者本人が契約締結すれば、そのまますんなり認められるかというとそうではない。

 ここで(2)民法の5条1項の規定が出てきて、未成年者が契約を結ぶときには、その法定代理人(親権者・後見人)の同意を得なければならないことになっているのである。「契約」を結ぶときはとあるように、「労働契約」だけではなくて、家主と賃貸契約を結ぶとか、ありとあらゆる契約一般である。契約一般について、法定代理人の同意を得なければならないことになる。しつこいようであるが、労働契約においても、法定代理人(親権者・後見人)の同意を得なければならないことになる。未成年者の意思だけでは、完全な契約はできないということである。
 そこで、未成年者が法定代理人(親権者・後見人)の同意を得ないでした契約は、完全な契約ではないので、(3)民法5条2項の規定があり、未成年者本人または法定代理人(親権者・後見人)によって取り消すことができる。

 これが未成年者の労働契約の全体展開ということになる。しかし、これだけではない。(4)労働基準法58条2項の規定である。
 「親権者もしくは後見人または労働基準監督署は、未成年者が使用者と締結した労働契約が、未成年者に不利と認められる場合においては、将来に向かって解約することができる」とある。

 ここでは、解約権を持つ者として、労働基準監督署という登場人物がもう一人出てくる。親権者・後見人にあっては、すでに契約締結のときに、契約の内容に同意した者であるはずではあるが、実際に具体的に動かしてみて労働契約の内容が未成年者に不利な内容であると分かったときには、その時点で将来に向かって解約できることになる。労働契約においては、未成年者にとっては、2重に保護されていることになる。

 参考;労働法(第2版) 林弘子 法律文化社
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