ことのはに ふかきいろかを かきやりて
ふではこころの つかひなりけり 宣長
骨董市の買い物の中には、本体に付随した物が素晴らしい時がある。
それが今回は、この本居宣長の歌が書かれた料紙だった。
これも、今までに登場した書と同様に、古い茶碗を入れた箱の中で
くしゃくしゃに丸められ、緩衝材として使われていたものである。
深みのある桃色地に鳳凰文の趣きある料紙に
見事な筆運びで綴られている。
あまりの見事さに、書道歴の長い友人に調べてもらうと、
この歌は本居宣長全集第十五巻「鈴屋集」に収められており、
書体は一般的なものよりも難しい崩し字で、国学者であった宣長の
直筆の可能性もあるかも知れない、とのことだった。
もしそれが本当なら嬉しいが
たとえ本物であっても、なくても、その美しさには変わりはないので、
今後何らかの形で保存して、これ以上の劣化を防ごうと考えている。
そして、時々眺めて は筆は心の使いなりけり と
つぶやいて宣長さんを偲ぼうと思うのである。
※ 読み下し文は素人のものですので、お気づきのことがありましたら、
お教え頂きたくお願い致します。