15万都市を目指す都市経営上の観点から、市街地の面取りと自然環境の保全、それに地域間格差としての南北問題に触れてきましたが、江別、野幌、大麻(おおあさ)のそれぞれの駅前周辺の再開発を捨象するわけにはいきません。
この江別、野幌、大麻(おおあさ)の3地区の並列的な振興、あるいは底上げの努力は継続行うにしろ、現下の趨勢を下敷きに将来の市街地形成を展望するとき、江別の街の顔としての都心地区の開発が急がれます。その都心地区は、野幌駅周辺の商業地区であり、それはほぼ市民の合意が得られたところです。
岡市長も、4年9月の議会における答弁で、『野幌地区を15万都市の中心と考えている』と言明したことから、同地区の市街地再開発事業の導入などによる再構築が、今後の重要課題と成りました。
いわば、都市の中の都市、ヘソのある都市作りの段階へと一足階段を登ったことに注目しなければなりません。
(中略)
『例えば、東京の友人に「今、どこに住んでんの?」と聞かれれば「札幌」と即答するだろう。「札幌のどこ?」と再び問われたら「厳密には札幌の隣まち」と答える。「それは何てとこ?」と畳み掛けれられて、はじめて「江別市」と行政体の名称を口にする、と思う。これは、江別に住んでいることが恥ずかしいから隠しているわけではもちろんない。一つには意識として札幌の人間であり、また先に江別と言って「江別ってどこにあるの」とか、「どんな街」と必ず聞かれるから面倒臭いのだ。だいたい江別を説明しろと言われてどう答えたら良いのか(後略)』(「しゃりばり」'94年4月合)。
これは、自覚なき市民Y・Iという匿名氏の「江別よ、もっと独自の光を持て!」の一節です。
平成2年の「市民生活環境意識調査」において、江別は「住み良い街」であると答えた人が76%という高率に首肯することが容易であるとしたら、また、この匿名氏の文に頷くことも容易なことでしょう。
約言すれば、生活上非常に住み良いが、街全体に個性が欠けていて、その点物足りないといえるでしょう。
無論、住み良い街であれば、それでよしという意見もあるでしょう。
自然環境もよく、文教施設や交通網に恵まれ、しかも、下水道普及率や公園設置など、都市基盤においては道内の他都市に優るとも劣らない整備状況となっています。
個性云々以前に、むしろそれを誇りとすることもできるでしょう。
しかし、都市にも人格があり、生き物であるとしたら、そこから滲み出る個性が欲しくなるのも、他者にそれを認めてほしいと思うのも、また自然なことです。
そうした意味を含め、ランドマーク構想やグリーンモール、陶芸の里構想、あるいはRTN構想など、いわば、歴史と風土を下敷きとした各種プロジェクトが進行中でもあるのです。
それらが結実するには長い年月を必要とします。
議会に於いても、再三再四にわたり、個性的な街づくりの論議が交わされています。
歴史と自然に裏打ちされた個性の創出は、60年代以降の、一つの行政課題にまで高められました。
こうした背景もあり、江別の街づくりの一つとして都心地区の開発が志向されようとしています。
これは、江別市総合計画・後期基本計画の中におけるリーディング・プランの筆頭に挙げられることになります。
註:江別市総務部「えべつ昭和史」788-789頁.
写真:JR野幌駅
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