脱穀機が導入されたのは、農産物市場における競争に優位に立たなければならない、現実的な強い要請です。
農産物の生産過程の最終段階において、商品として送り出す産品の規格の統一、品質の均質化です。
出来秋に売り急がざるを得ないという事情も大きかったのです。そこから、発動機が出張し、請負稼ぎが出来たという、そのあたりの事情も納得できるでしょう。
農家が発動機をはじめ改良農具を容易に購入できたかといえば、そうではありません。
資本の蓄積がありませんでした。
大戦景気に沸いたのは一時であり、大正も末になると体力は既に著しく低下していました。
「農村ニ在リテ近年益々疲弊衰退ヲ加ヘ 全国挙ゲテ憂慮セラルル現況ニアリ」(『江別町事務概況』大正13年)と溜息を漏らさざるを得ませんでした。
昭和2年(1929年)5月、北海道庁は庁令第81号「優良農具補助規程」を公布しました。
つまり、多くの農家は市場の要請に応える近代化への投資は、まだまだでした。
だからヘラクレスや脇豊勝の出稼ぎの余地があったのです。
そこで優良農具普及の補助金政策がようやく陽の目をみました。ただ、但書がつきます。
これは共同使用が原則であり、補助金の受け皿は、農会、農事実行組合、産業組合など道庁長官が認める団体で、補助率は購入価格の30%以内となりました、
補助の対象となった、いわゆる優良農具は、電動機、石油発動機、籾摺機、精穀機、撰別機、刈取機、製粉機、噴霧機などです。
註 :江別市総務部「新江別市史」337頁.
写真;松下新太郎家(八幡)のエンジン脱穀機(昭和12年)
同上書337頁掲載写真を複写・掲載致しております。
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