後期旧石器時代の後半はいわゆる細石刃を特徴とする石器群が催行していました。
細石刃とは、幅5mm、長さ4cm-5cm、厚さ1mmー2mmほどの小さな石刃のことです。
細石刃それ自体は石器として使用できなませんが、骨や角、木などの軸に細い溝を掘り、その溝に沿って細石刃を埋め込み、槍先やナイフとして使用します。いわば、替え刃のようなものです。
この細石刃を作り出す方法には、さまざまな方法が知られています。
その代表的な技法の一つに湧別技法と呼ばれる製作工程があります。
まず最初に、大きめの石槍様の両面加工の母体を作り、その長軸と平行に平らな面を作り出す。
この時剥ぎ取られた剥片はあたかもスキーの様な形をしていることから、スキー状スポールと呼ばれています。
こうして調整した石核の端に打撃を加え、次々と細石刃を剥ぎ取っていくのです。
この工程の石核には白滝型、札滑型と呼ばれる2種類の細石刃核が知られています。
このほか、やや厚手の石刃や剥片を利用し細石刃とするもの、小型の両面加工の石器を素材とするもの、等々さまざまなタイプの石刃核や剥離技法が知られています。
これらの細石刃核の多様性は、それが時間的変遷を示すものなのか、それとも地域的な特徴なのか、研究者の間では意見の分かれるところです。
しかしながら、発掘調査の層位的観察や同時に得られたC放射性同位体分析などによる年代測定から、細石刃核の最も古いタイプは峠下型、蘭越型と呼ばれる細石刃核で、その後札滑、白滝型等の湧別技法と共に各種の細石刃の変化した制作技法が各地に現れ、最終末期はオショロッコ型細石刃核で終わるという考えが現在の一般的な見解です。
従来、細石刃文化は、恵庭岳の軽石層堆積以降の時代であると考えられてきました。
しかし、平成9年(1997)年から平成10年に発掘調査が行われた千歳市柏台1遺跡では、恵庭軽石層の下部からまとまって細石刃を含む石器群が発見され、C年代測定では1万9850年前から2万790年前という測定値が得られたのです。
したがって、現在では、細石刃文化はおよそ2万1000年前ころに出現し、1万年程前に終末を迎えたと考えられています。
その最終末期には局部磨製石斧や基部に舌状の柄部をもつ有舌尖頭器と呼ばれる石槍を伴っています。
そして、この有舌尖頭器文化を最後に旧石器時代は終わりを告げ、縄文時代へと移っていきました。
註 :江別市総務部「新江別市史」19-20頁.
写真:細石刃の制作工程<出典:宇田川洋「アイヌ文化成立史」北海道版企画センター>
同上書20頁掲載図を複写し、江別創造舎ブログおよび江別創造舎facebookに掲載いたしております。
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