コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

司法と報道が依拠したもの

2012-02-20 23:51:00 | ノンジャンル
はじめはただの工員風だった遺族の本村洋さんは、この13年間で驚くほど変貌した。人間は変わることができる。本村さんが何よりの見本ではないかといって、反対する人は少ないだろう。本村さんは変わりたくもなかったろうが。ならば大月被告も変われるのではないか、そう思うのも人情ではないか。

死刑が確定したことで、マスコミは被告への同情論を持ちだしている。母の自殺を目撃したことや父親の暴力にさらされたことで、犯行当時の18歳より未成熟だったのではないかと。これまた、死刑判決にただひとり反対した判事に拠ってのことだ。これまで本村さんに拠って、その弁護活動を含めて、「反省なき18歳」をさんざん叩いておきながら。

被告の犯行後の数々の暴言や誹謗こそ、「反省なき18歳」であることこそ、何より被告の未成熟を示すものだったはずなのに。そして、死刑判決すら、「遺族の被害感情は峻烈」と本村さんに拠っている。なにが、どこが、司法なのか、報道なのか。拠る辺なき、大月被告と本村さんが残されただけではないか。

光市母子殺害の元少年、死刑確定へ 最高裁、上告棄却
http://www.asahi.com/national/update/0220/TKY201202200258.html
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それでも小沢は有罪

2012-02-18 01:29:00 | ノンジャンル
例によって、今夕の日刊ゲンダイは、「小沢無罪」と大きく一面に打っている。日刊ゲンダイが「小沢無罪」なら、やっぱり、「小沢有罪」なのかとうなづくのが、リテラシーというもの。無罪への伏線ではなく、有罪へのアリバイづくり。証拠はきちんと吟味しましたよ、公正でしょ、と。そんでやっぱり、「小沢有罪」。どうしてかというと、公正な裁判所の判断だから。

石川議員の調書を不採用=虚偽記載「報告・了承」―小沢元代表公判・東京地裁http://news.livedoor.com/article/detail/6287749/
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同情するなら金をくれ

2012-02-14 09:46:00 | 音楽
48歳はいかにも早すぎる。

すでにダイアナ・ロスという先例はあったけれど、デブじゃない! なんてスレンダーなんだと、ちょっと驚いたのが第一印象だった。

グラミー賞会場は、追悼の言葉で溢れたそうだ。

麻薬中毒のあげく破産して、わずかなドルにも困っていたのはみな知っていたはず。そんなにたくさんのスターたちが敬愛していたのなら、一人1000ドルくらい回してやれば、すぐに数千万円も集まっただろうに。元夫のボビー・ブラウンもいったい何をしていたのか(ボビー・マクファーリンと結婚していれば、もう少しマシではなかったか)。

映画「ボディガード」の主題歌が繰り返し流されている。

アレサ・フランクリンが名付け親でディオンヌ・ワーウィックが従兄弟というR&B名家に育ちながら、こんなセリーヌ・ディオンみたいに歌い上げなくてもよかろうに。おかげで全米的な歌姫になれたのだとしても、R&Bシンガーとしては満たされていたのかどうか。

今回のグラミー賞に輝いたのは、イギリスの歌手アデルだった。

オールウェイズ・ラヴ・ユー」やスーパーボウルでのアメリカ国歌斉唱」によって追悼された故人より、ずっとソウルフルなリズム&ブルースをアデルが歌っているのは、皮肉なめぐり合わせに思えた(おまけに、ジャニファー・ハドソンの「えんだあああ♪」はまるでダメだった)。

ついでに、映画「ボディガード」は、ケヴィン・コスナーのマヌケ面のおかげで、きわめつけの駄作だった(マドンナのコンサート後、花束を抱えて楽屋を訪ねたケヴィン・コスナーが、「君は歌が上手だ」と褒めて帰った後、「ねえ、いまの聞いた? いったいどこのバカなの、あれは!」とマドンナが憤慨したエピソードは有名)。

アデル 『サムワン・ライク・ユー』 Brit Awards 2011

(敬称略)
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暴力を手放す

2012-02-10 01:49:00 | レンタルDVD映画
これは拾い物のカナダ映画「small town murder songs」

田舎町の警察署長が自らの暴力性向を抑制しようと悩みながら、ストリッパー殺人事件の捜査をしていく。殺人鬼や殺し屋を演らせたら、右に出る者は世界に3人くらいしかいないというピーター・ストーメアが署長だから、いつキレるかハラハラするのが見どころのひとつ。聴きどころは、PVかと思うほど全編に流れるブルース・ペニンシュラの演奏だろう。

1時間10分という短い上映時間の濃度を上げたのは、宗教色の強い田舎町の風景とあいまって、このカナダのバンドの力強いサウンドにちがいない。だみ声のブルースボーカルと女声コーラスのコール&レスポンスが、だんだんウォルター署長の独白と天上から呼びかけの声に聴こえてくる。

トロントとシカゴの映像の区別がつかないが、田舎町となるとアメリカとカナダのどっちか、ほとんどわからない。しかし、たとえカナダをまったく知らなくても、この映画が非アメリカの町を描いていることが、やがて、観終わってからは、はっきりわかる。

ウォルター署長が兄や父親と話すときは、ドイツ語(?)を使う移民の息子であり、兄は南米からの出稼ぎ労働者を雇って農場を経営している。農林業をおもな産業とする町の人々はキリスト教の小宗派の熱心な信徒で占められている。

平穏ではあっても退屈な田舎町で、暴力衝動を抑えかねている警察署長が主人公なら、これがアメリカ映画であれば、移民や出稼ぎや宗教間の軋轢から、不穏な空気が高まり、人々の疑心を呼び込み、ふとしたきっかけで憎悪が噴き出し、暴力が炸裂するクライマックスに向かうものだ。

が、そうはならない。暴力や血が流れるシーンはごくわずかに過ぎない。私たちは欧米の基準をどうしてもアメリカに拠りがちだが、アメリカが異様異常なのであって、非アメリカがふつうなのだとあらためて思う。暴力は抑え込まれるのである。きわどいところで。

登場人物は少なく、筋立ては単純、カメラワークも単調で、クライマックスも小事件に過ぎない。ただし、少し考えてみると、この small town が地球の縮尺のように思えてきた。暴力は抑え込まれるのである。暴力に嫌悪感を抱く人々と個人の意志の力で。

Crabapples (live) Bruce Peninsula


AS LONG AS I LIVE


(敬称略)
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今宵は雨の歌

2012-02-08 20:36:00 | 音楽
北は豪雪によって深刻な被害を出しているというのにすみません。こちらはここ数日、雨の日が続いています。

雨の中の二人 橋幸夫


♪ららスイスイスイ♪からの前奏にしびれます。昔よく作られた、ヒット曲の人気に便乗した歌謡曲映画のようです。いまとまるで違う田村正和に、中村晃子です。

雨に唱えば Gene Kelly


何度観ても凄いジーン・ケリーの神技です。上の「雨の中の二人」もそうですが、かつてのスクリーンは輝いていました。照明が違うだけではないでしょう

(敬称略)
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