コタツ評論

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田母神論文は冗談である

2008-11-12 04:53:09 | ノンジャンル
田母神論文が1945年の近衛上奏文と同じコミンテルン陰謀史観だとすると、自衛隊の戦史研究の蓄積と成果が盛られているはずである。すると、以下のような可能性が考えられる。

参考文献:http://ja.wikipedia.org/  wiki/近衛上奏文
「吉田茂とその時代 下」http://moon.ap.teacup.com/applet/chijin/200803/archive

①近衛文麿たちの戦争研究がきわめて優れていた
②自衛隊の戦史研究は1945年から進んでいない
③自衛隊は戦史研究を行っていない

②と③の場合なら、アパ論文は田母神氏個人の研究成果ということになり、今回の解任は言論の自由だけでなく、研究の自由をも侵す暴挙になりかねない。

また、②③のいずれであっても、潜在的な仮想敵国に対して脆弱な軍備(戦史や軍事研究は重要な軍備に数えられる)を曝す国家機密の暴露となり、極東の軍事バランスに深刻な悪影響を与えかねない。にもかかわらず、あえて公表したとすると、以下のような可能性が考えられる。

④田母神氏をはじめとする自衛隊の一部が、日本の真の独立と自衛のため国民に理解を うながすため一石を投じた
⑤あえて一石を投じさせ、憲法にうたわれた言論や学術研究の自由を越えた拘束力を「村山談話」に与え、自衛論議の弱体化を狙うコミンテルン残党の陰謀である。

注:コミンテルン残党とは、いうまでもなく中ロ朝と米の転び左翼であるグローバリストを指すが、国内では辞任した中山前大臣が指摘したように日教組が代表とされる。

④⑤であった場合、極東アジアの平和と安定を願う田母神氏の善意が、コミンテルン残党の陰謀によって歪められ、反動的な改憲論者や軍国主義者の妄言とされたのであって、職を失った田母神氏は被害者となる(先の大戦おける「日本被害者論」という論文の指摘を自身をもって裏づけつてしまったのは皮肉である)。

したがって、今回の騒動の落としどころは、

⑥田母神論文は冗談である

とするしかないと愚考する。

しかし、今回の田母神解任騒動が暴露した最大の国家機密は、実は上記の事柄などではない。たかが安ホテルと安マンションを売っている程度の企業でも、世界第2位の国防予算を持つ自衛隊のスポンサーになれるという衝撃的な事実ほど驚くべきことはない。基地の一つくらいであれば、地元警察署の運動会にビールを差し入れするパチンコ屋くらいの親密な仲になるのは容易だということだ。社長が自費出版に等しい自慢本を出版する際の箔づけに使われる論文公募に、航空自衛隊を挙げて隊員に応募させるほどの影響力を持てるということだ。

つまり、それを裏返せば、一般市民や企業は自衛隊を社会のメンバーとまったく思っていない。自衛隊に求心力がまるでなく、国民と自衛隊がはなはだしく乖離しているという、国防上、由々しき事態を露呈させてしまったのである。当然、潜在的な仮想敵国の侮りとさらなる陰謀工作を招くだけでなく、国民の支持と信頼の欠如を思い知らされた自衛隊員が、その士気をいっそう低下させることは火を見るより明らかである。

不本意な定年退職を強いられた田母神前空幕長が、「退職金は返上するのか」と記者に問われ、「生活が苦しいので、ぜひ使わせていただきたい」と答えたのには、思わず眼を伏せた。戦後63年を経ても、軍隊とも武人とも遇されず、村の消防団の団長程度の人物をトップに就かせた上、解任に対する申し開きも切腹もさせず、政局を避けるために与野党談合して、さっさと定年退職と発表してうやむやにする。しかも、退職金を自主返上させようとする。

こんな欺瞞に満ちた「シビリアン・コントロール」の顛末を見せつけられた自衛隊員の心中は察して余りある。彼らの一部は「シビリアン・コントロール」に失望し、やがて法治を深く疑うようになり、自衛隊の自主独立を願うようになるだろう。俺が自衛隊員なら、必ずそう考える。そのとき、自衛隊は国民にとってこの上なく危険な存在になるはずだ。

したがって繰り返すが、今回の騒動は、

⑥田母神論文は冗談である

とするしかない。ぜひそうしてください。みんなそういうことにしようよ。

(敬称は略していないはず)