
驚いた。昨日、日本郵政の西川善文社長の辞任記者会見が開かれ、西川社長の唇を震わせた表情が映されたが、今朝の臨時ニュースでは斎藤次郎元大蔵省事務次官が後任に決まったという。
驚いたの1
13日に亀井郵政改革・金融相が西川社長に会見を申し入れて引導を渡し、28日の取締役会を待たずに20日に辞任記者会見を開かされた。この間、わずか一週間。辞任は既定路線なのだから、28日の取締役会で辞任が認められてから、記者会見を開いてもよかったはず。
「開かされた」この記者会見において、「郵政見直しに関する鳩山内閣の基本方針を通告した(亀井)」に対し、「(基本方針は)これまでやってきたこと、これからやろうとするものに大きな隔たりがあった(西川)」と語られた。つまり、西川社長が「自分の能力をはるかに超えるものだったが」と皮肉を込めたように、民主党政府の「基本方針」に最後まで対立・抵抗した「敗戦の弁」であった。
いかに前政権の政策とはいえ、国策会社の改革のため三顧の礼で迎えた民間企業トップに対し、実質的に「更迭」したことを見せつける目的の記者会見だった。礼を失している以上の非情さである。
驚いたの2
斎藤次郎元大蔵省事務次官といえば、細川政権のときに、小沢一郎と組んで7%の「福祉目的税」導入を図り、結果的に細川政権を瓦解させた張本人である。
その後も、小沢一郎の政策ブレーンを努めてきたことに不思議はないが、日本郵政の後任社長として表舞台に出てくるとは意外だった。とうに東京金融取引所に天下った「過去の人」の敗者復活戦である。次官時代に「カミソリ」と畏怖された斎藤次郎は、いまも財務省に強力な影響力を持つといわれるが、表舞台に出て役職を得た場合の影響力の行使とでは雲泥の差がある。
驚いたの3
政策は鳩山内閣、党務と選挙は小沢の棲み分け政権といわれてきたが、とんでもなく的はずれであることがこれではっきりした。連立政権の主軸はやはり小沢であり、郵政改革や金融政策も小沢主導で進められると考えて間違いないだろう。亀井金融相が提唱するモラトリアムの実現可能性がいちだんと高まっただけでなく、かつて挫折した「福祉目的税」導入が再浮上するかもしれない。
政治主導といいながら、元大蔵官僚の藤井裕久財務大臣に、今度は元大蔵省事務次官の斎藤次郎とくれば、結局、旧大蔵省=財務省主導ではないかといわれるだろう。が、財務省は一枚岩ではないはず。自民党政権やアメリカ共和党政権と近かった財務省トップは急速にその省内の求心力を失っているだろうし、「天下り禁止」によってOBとしての影響力も減殺されるだろう。「小沢支配の財務省主導」が見えてきたといえば穿ちすぎだろうか。
西川のような、「水に落ちた犬」を打つだけでなく、犬のいる場所そのものを水没させようというつもりにも思える。西川辞任記者会見を見ながら、変ないいかたになるが、「世界基準」の徹底した政敵の追い落としがはじまる気がした。
自民党の政争は、相手を殺すまではしなかった。将棋のように、負けた者を自分の手駒にして活かした。小沢はチェスをやっている。殺して盤外に置く。もちろん、「反小沢」がこのまま黙っているはずもなく、反撃も開始されるだろうが、その旗を誰が担うのか。自民党からではなく、意外な人物が出てくるだろうな。
「政権交代って、ホントにおもしろいですねえ」(@水野晴夫)
「おもしろくっても、大丈夫」といったのは誰だったっけ。
(敬称略)
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