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コタツ評論

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おもしろうてやがておそろしき

2010-06-04 01:17:00 | ノンジャンル


理想主義のハーバードの俊秀たちが、完璧な嘘発見器「トゥルースマシーン」を開発、人類を正直化して、戦争とテロと犯罪から世界を救うという近未来SF。

『天才アームストロングのたった一つの嘘』(ジェームズ・L・ハルペリン 角川文庫)

本作品がデビュー作で職業作家ではないらしい著者もハーバード卒。「トゥルースマシーン」の開発を本気で提唱しているらしい。

一人のテロリストやキチガイが核を手にする日。すなわち人類が滅亡する日と競争するように、「トゥルースマシーン」の開発が急がれる。開発に関わるハーバードの俊秀たちの議論が、あたかも人類の英知が結集したように展開されるところが読みどころ。世界最大最強のアメリカの、もっとも優れたエリートたちが、世界を救うためにどんな議論をしているか。

しかし、長崎・広島への原爆投下への彼らの「感想」がひどい。「多くの人命を救うためにしかたなかった」で済ますのだ。また、小説中では、イスラエルがイラクに核攻撃をして、100万人以上が死ぬ惨事が「予測」されている。イスラエルの言い分は、やはり、「多くの人命を救うためにしかたなかった」である。

2001年911の後に書かれたため、ではない。この小説が書かれたのは、1995年である。俺は、ブッシュやチェイニー、ラムズフェルドなど、「ネオコン」が、「テロとの戦争」を掲げて、イラクやアフガニスタンに侵攻したと思っていた。2001年911を境にして、アメリカ国民の意識が劇的に変わったと思っていた。

アメリカの「ベスト&ブライテスト」とされるハーバードの学生ですら、長崎・広島への原爆投下を正当化し、「未来の核攻撃」をも正当化しているのだとしたら、911以前からアメリカ人の間に、核も厭わぬ好戦的な気分が広く共有されていたことになる。現在なら、イランへの核攻撃をアメリカ国民の大多数が支持しているようなものだ。

やはり、アメリカとアメリカ人は、長崎・広島への原爆投下について、さほどの痛痒を感じていないのではないか。痒みすらないほど気にしていないとすれば、それはもう挙げて日本の責任である。

(敬称略)
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