コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

バカのための読書術(小谷野敦 ちくま新書)

2006-06-21 02:07:04 | ブックオフ本
「難しい本」がわからない「バカ」のための本の選び方や読み方。自らも「バカ」の一人として赤面の読書体験を語りながら、この分野ならこれを読め、これは読むなと「玉石」を分けていく、「歴史実証主義」的な説得力には胸がすく。世評の高い本でも難解すぎて後が続かなくなるのを心配して、入門書を読んでからでいいとか、入門書に適切なものが見当たらなかったり絶版になっていれば、こんな小説や漫画、映画からとりあえず概略をつかめるよと、とても親切。

論壇の「バカ」を腐しつつ、市井の「バカ」を励まし、「バカ」をこじらせて真正のバカにならぬようと願いが込められている。人はバカに生まれない、バカになるのだ。「難しい本」の難しさの種類をゴシップとスキャンダルもからめて解説しているから、一読すれば「難しい本」をむやみに恐がらなくなることうけあい。そんな著者の「私憤」だけでなく、新書や文庫から教養主義が払底し、適切な入門書が入手困難になっているとの公憤もある。「学ぶ機会はいくらでもある」が無責任な放言になりつつあるわけだ。小谷野敦は『もてない男』(ちくま新書)で、世の恋愛至上(市場)主義に果敢に突撃したことで知られた人。

追記
ちょうど、少し前に話題になった『ウェブ進化論』(梅田望夫 ちくま新書)を読みはじめている。グーグルは、膨大なネット情報から石を捨て玉を選び出す、「知の再編成」に乗り出しているそうな。グーグルは、「バカ」についてどう考えているんだろう?
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 上々じゃないか | トップ | こういう男になりたい(勢古 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブックオフ本」カテゴリの最新記事