コタツ評論

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友がみな我よりえらく見える日は

2008-06-16 00:42:09 | ブックオフ本
いずれも例によって、田端の古書店の100円コーナーにて買い求める。

『本の森の狩人』(筒井康隆 岩波新書)
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説得力に富む書評のおかげで、その本を読まずにすんでしまう書評家の一人。もちろん、俺にとってだが。

『文学じゃないかもしれない症候群』(高橋源一郎 朝日学芸文庫)
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同上の一人。ほかには坪内祐三、中条省平、荒川洋治か。
『本の森の狩人』でも取り上げている、『不滅』(ミラン・クンデラ)、『千日の瑠璃』(丸山健二)などの書評を読み比べてみる。やはり、自分で読むより、かわりに読んでもらったほうがいいなと思った。

『模倣される日本-映画、アニメから料理、ファッションまで』(浜野 保樹 祥伝社新書)http://www.amazon.co.jp/

第1・2章の世界に模倣される日本の紹介ルポをレクチャーとして読んで、明日の企画会議に備えようという人が多いのでは。筆者としては、3章以降の「模倣される」の理由や背景こそ書きたかったはず。俺としては、「模倣されるクールな日本」より、「模倣してきたクールな日本」をより読みたかった。評価して模倣した、その評価の蓄積こそ、もっと評価してしかるべきではないか。

『スカートの風(呉 善花 角川文庫)』
http://blog.goo.ne.jp/shigeta-nas/e/97378e2d2ff5f62ac34f062816e37233

俺にも多少、在日コリアンの知り合いがいる。が、「在日」とは、ほとんど日本人のようで、だから「在日」をとおして、韓国人を知った気になるのは違うようだ。日本へ留学した自分史と韓国クラブの韓国人ホステスたちへの聞き取りを素材に、等身大の韓国女性の視点を座標軸にしたところで成功している。どうしてこの本がノンフィクションの賞を取らなかったか不思議。

『友がみな我よりえらく見える日は』(上原 隆 幻冬舎アウトロー文庫)
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扉に、「ボブ・グリーンタッチのルポ」とある。たしかに、似ている。ボブ・グリーンの「男の中の男」という文盲の中年男がおずおずと文字を習いはじめる話を想い出した。普通の男女を普通に書いて読ませるという普通ではないルポである。はじめて知った筆者であり、こんなルポを載せて原稿料を払う商業誌があるのかと読みながら首を捻っていたら、後書きに『思想の科学』に書いたとあった。さすが、『思想の科学』。風俗雑誌に連載したインタビュー集『AV女優』で出版界を瞠目させ、早々に病死してしまった永沢光雄以来、優れた書き手に出会った気がする。破廉恥事件が報じられてから、残念ながらボブ・グリーンは消えてしまった。アメリカではいまは誰のコラムが人気なのだろうか。

(敬称略)
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