コタツ評論

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今夜は、フラメンコ

2018-04-15 03:09:00 | ノンジャンル
今夜は、アストゥリアス(Asturias)です。ギター曲ですが、フラメンコダンスの動画を選びました。

なぜ、フラメンコ? なぜ、アストゥリアス? 

この映画のBGMにぴったりだと思ったからです。不安と焦燥のリズムを刻み、切迫と興奮を高める旋律から、断絶後、折り返す構成が、敏腕ロビイストであるミス・スローンの命ぎりぎり、タイトロープを歩くような手練手管、その成功と暗転の数々に見事に重なると思いませんか? 

フラメンコダンサーの優美にして力強い指先と腕、腰、脚はそれぞれ、ミス・スローンが他者を圧倒する、よく手入れされた直毛の赤毛であり、高級ブランドのタイトスカートであり、そのスーツより高価そうなピンヒールであり、なにより目を引くその冷徹な美貌だとは思えませんか? 

そして、カッカッカッと鳴り続けるカスタネットは…、もちろん、ミス・スローンが撃ちまくるマシンガンの音です。銃規制法案の推進を企図する女性ロビイストの活躍を描く映画の紹介に、マシンガンはないだろうって? いや、ミス・スローンの仕事は、全米ライフル協会をはじめとする強大な銃規制反対派に戦いを挑み勝つことなのです。

人民の武装を認めた合衆国憲法修正第2条を「星占い」と罵倒した、髪の先から足の爪までリアリストのミス・スローンです。「アメリカの民主主義を蝕む寄生虫」の彼ら相手に手段は選びません。同時に、控えめに鳴り続けるカスタネット音はミス・スローンだけが耳を澄まして聴いている彼女の心臓の鼓動であり、人々の血流の音なのかもしれません。

原題は、ミス・スローン(Miss Sloane)。「女神の見えざる手」という映画の話です。2016年公開のイギリス映画ですが、今年、これから日本でどんな映画が公開されようと、この映画はベストスリーから落ちることはないでしょう。私見では、と留保をつけず、賭けてもいい。それくらい、おもしろい傑作です。イギリス映画ですから、正義ぶった説教くさいところは微塵もありません。

ロビイストに左右される腐敗したアメリカ政治を描きながら、「ダイハード」のように、ミス・スローンがその智謀と弁舌でピンチを切り抜け、死地を脱する痛快滑舌劇ともいえます。ロボコック(ローチ)とか、小さな荒唐無稽を入れているのも憎い。

Asturias (Albeniz)
https://www.youtube.com/watch?v=L8EPgkwDk5U

Asturias de Albeniz por Los Gimenez



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