コタツ評論

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もうひとつの番狂わせ

2010-06-25 23:00:00 | ノンジャンル




W杯や五輪の代表戦だけをTV観戦する「にわかサッカーファン」ですらなく、スポーツニュースの「今日の結果」を観るだけですから、サッカーにはあまり興味がありません。ただ、おおげさにいえば、「日本人とサッカー」には、多少関心があります。

Jリーグが発足したとき、甲子園をめざす高校野球を頂点とするような、学校に組み込まれたスポーツ選手育成ではなく、ヨーロッパのような地域に根ざした市民サッカークラブの育成をめざすという理念が謳われました。

Jリーグのそれぞれのプロチームが傘下にユースチームをつくり、才能あるサッカー少年を早くから見出し、英才教育をしていかなければ、W杯で活躍するような、世界レベルのサッカー選手は育たないといわれました。

それは理念に基づくというより、現実的な選択だったはずです。Jリーグの発足当時は、圧倒的に野球人口>サッカー人口でしたから、中学・高校・大学・プロと続く、野球のような選手選抜システムに頼ることはできませんでした。

また、県大会や全国大会に向け酷使され消耗が多大な野球の選手育成を反面教師とした面もあるでしょう。少年野球から、中学、高校、あるいは大学の野球部には、それぞれ監督やコーチがいるおかげで、その指導や訓練に一貫性がありません。

Jリーグ発足から17年。日本代表は南アW杯を2勝1分けで決勝Tに勝ち進みました。番狂わせも3回続けば、それなりの強さの証明といえるでしょう。Jリーグのサッカー少年に対するエリート教育が実を結んだのでしょうか。

なぜ世代が上がるにつれてユース出身者の割合が落ちるのか

W杯日本代表の経歴

GK:
楢崎正剛(奈良県出身:奈良育英)
川島永嗣(埼玉県出身:浦和東)
川口能活(静岡県出身:清水商)

DF:
中澤佑二(埼玉県出身:三郷工業技術高)
田中マルクス闘莉王(ブラジル出身:渋谷幕張高)
今野泰幸(宮城県出身:東北高)
岩政大樹(山口県出身:岩国高→学芸大学)
駒野友一(和歌山県出身:サンフレッチェ広島ユース)
長友佑都(愛媛県出身:東福岡高→明治大学)
内田篤人(静岡県出身:清水東高)

MF:
中村俊輔(神奈川県出身:桐光学園)
遠藤保仁(鹿児島県出身:鹿児島実業)
中村憲剛(東京都出身:都立久留米高→中央大学)
稲本潤一(鹿児島県出身:ガンバ大阪ユース)
阿部勇樹(千葉県出身:ジェフ千葉ユース)
長谷部誠(静岡県出身:藤枝東高)
本田圭佑(大阪府出身:星稜高)
松井大輔(京都府出身:鹿児島実業)


ユース出身がわずか3人に過ぎないことには、明らかな有意差があると思われますが、それが直ちに、学校の部活動としてのスポーツ選手育成の優位を示すとは思えません。あるいは、結局、サッカーも野球のような学校選抜の選手育成に、先祖帰りしてしまったと断ずるのも、性急に過ぎるでしょう。どちらかではなく、どちらでもない変化の徴候かもしれません。そんなサッカーの周縁が、私にはおもしろいですね。
コメント
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