コタツ評論

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恋は愚かというけれど

2002-09-03 23:24:39 | ダイアローグ
お前はいつものように前脚を叩き
オウッオウッと鳴きながら
俺の前へ進み出る
一心に俺を見つめる黒濡れた瞳に
視線を合わせ人差し指を立てる

グル~リ 右へ ウネ~リ 左へ
掬っては高く上げるビーチボール
西日の陰差す寂れたマリンランド
工事現場の足場パイプを組んだ舞台
ギシギシ軋む板床に割れたスピーカー

白黒まだらの肌を晒したお前と
菜っ葉服に長靴の俺
お前は大胆に俺は控えめに
寄り添い離れる影のダンス
懸命な演技に報いるには
残り少ないバケツの鰯

さあ クライマックスだ!
俺はいつものように指を鳴らす
俺を押し倒しお前がのしかかる
観客のどよめきと一瞬後の爆笑
いつものように照れ笑いを浮かべる俺に
お前は瞳を輝かせて囁いた
「愛しています」

俺の人魚は
俺の身体の上で何度も跳ね上がり
何度も俺を押し潰して歓喜した
俺は血泡に咽せながら
本当の照れ笑いを浮かべて
言った
「俺もだよ」

(9/3/02)

コメント
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