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皮膚のトラブルは女性につきもの(続報3)皮膚科に通院しても改善しないアトピー性皮膚炎、色素沈着症、慢

2014-09-23 00:15:00 | アトピー性皮膚炎

 

経過は前方(920日記)と非常に似ている37歳女性です。皮膚病変も類似しています。

 

初診(平成26430日)時の皮膚所見をご覧ください。

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炎症性の浮腫があり、顔面は少し浮腫んでいます。但し、皮膚表面はザラザラして乾燥しています。いわゆる苔癬化局面と言えるでしょう。前額部には色素沈着があります。眉毛部分にも痒疹が存在し、苔癬化のために眉毛の末梢部の脱毛が認められます。

 

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顔面から顎下、全頸部、鎖骨周囲、肩甲部の苔癬化を伴う痒疹、色素沈着が認められます。

 

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後頚部にも同様の苔癬化アトピー局面と色素沈着が顕著です。左肩の皮膚には苔癬化の特徴である皮膚の硬化と厚化、乾燥が観察されます。

 

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肘部の苔癬化皮膚病変です。一部に色素が脱出して白斑化しています。色素沈着、発赤を伴う痒疹の程度は上の写真部位よりも軽度です。

 

皮膚科、眼科等で治療中でしたが、皮膚の苔癬化は進む一方で、痒みを伴う痒疹も改善しないので当院を受診されました。

 

かつて、ステロイド剤による対症療法と中止後の反跳(リバウンド)を繰り返してきたために「ステロイドは使いたくないです」と問診票に記載がありました。

 

某皮膚科での直近の治療内容

 

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抗アレルギー剤としてオロパタジンが1日2錠処方されています。私は、オロパタジンは使用しません。というのは、重大な副作用情報が報告されているからです。以下、

 

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急激に肝機能が悪化して劇症肝炎で死亡する報告があったのです。このような副作用情報は当該薬剤が薬価収載された後での報告ですから、死因との「直接的な因果関係」は不明なものも含むでしょうが、死亡例の副作用情報があった以上、私は使用を即時中止します。幸いにも、私はオロパタジンの使用経験はありませんでした。ある薬剤の適応症(保険が効く病状)が拡大した場合にも、後になって深刻な副作用情報が報告される場合があります。帯状疱疹後神経痛の薬剤「リリカ」(一般名・プレガバリン)を服用した後、劇症肝炎や肝機能障害の重い副作用を発症する症例が確認され、肝機能障害の注意を促す記述を薬の添付文書に加えるよう厚労省の指示があったのも最近の話です。適応症の拡大が副作用事例の拡大につながる例です。

 

某皮膚科処方続き:

1

 

漢方薬として白虎加人参湯1日9g(量が多いですし、意味が不明です)、治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)17.5gが処方されています。苔癬化アトピーでは論外でしょう。理由は前稿で述べたように、養陰剤の配伍がないこと、蒼朮(燥湿健脾)は温燥の性質を持つこと。大黄の配伍目的が不明なこと、過去に著効した経験が無いことなどです。白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)1日9gの処方も疑問です。傷寒論に忠実に記載すれば、白虎湯(びゃっことう):石膏 知母 生甘草 粳米(こうべい 中国語でジンミー)に人参を加えた白虎加人参湯証は大熱、大汗、大煩渇、欲飲水数升、背微悪寒、舌質紅、舌苔乾燥白、或いは黄燥、脈洪大やや無力あるいは浮滑となります。八綱弁証で表現すれば、陽明経燥熱実症と気津損傷が加わった虚実挟雑症です。9gの大量を30日分処方とありますが、清熱潤燥の作用は知母のみであり、石膏と、治頭瘡一方(ぢづそういっぽう)17.5g中の大黄で、ひたすら冷やせばよいと考えているズブの素人の幼稚な発想です。方薬説明も「体質(素体)を変える」とか、「いろいろな効果」とか処方医同様の全くの素人的な説明です。患者のどこに、じくじくした「湿疹」があるというのでしょうか?全く無いです。

 

初診時の治療方針と処方:抗アレルギー剤のオロパタジンは副作用の危険性がある以上中止する。白虎加人参湯、治頭瘡一方は効果が無い以上中止する。外用剤としては、保湿剤、何よりも痒み止めが必須、加えて、康仁堂漢方薬エキス(養陰血、清熱涼血剤)、極少量のステロイド剤(通常の1/15濃度)を混合して処方。経口剤として、養陰血/祛風止痒剤(康仁堂苔癬化アトピー方)を13回午前中、午後空腹時と眠前に服用、西洋抗アレルギー剤(オロパタジンやステロイドを含まない)はエバスチン(エバステル後発品)OD2錠に変更、シナール(ビタミンC製剤)3錠、ビオチン1.0g(以上1日量)を併用。康仁堂慢性アトピー禁食、養陰方による食事指導。康仁堂苔癬化アトピー方の一部を紹介しますと、生地黄 黄柏 知母 天門冬 麦門冬 沙参 当帰 白芍 炙甘草 白朮 白蒺藜 荊芥 防風 何首烏 玄参 黄耆{加 玉竹(滋陰潤肺、生津養胃、白花蛇舌草(清熱解毒利湿 静菌 免疫調整)、川芎(活血行気、祛風止痛)、丹参(涼血活血祛瘀)など)}です。

 

治療経過

 

第6診(平成26626日)

 

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顔面の乾燥した苔癬化痒疹は大幅に改善されました。炎症性浮腫は消失しました。

 

 

第7診(平成26726日)

 

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顎下、全頸部、鎖骨周囲、肩甲部の乾燥した苔癬化を伴う痒疹はほぼ消失、皮膚に潤いが生じてきました。色素沈着も改善しつつあります。

 

第8診(平成26829日)

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初診時から4か月後です。

 

後頚部の苔癬化アトピー局面と色素沈着の改善が顕著です。初診時の皮膚の硬化と厚化、乾燥した皮膚には一転して「潤い」と「しっとり感」が生じてきています。

 

再び、同部位の初診時写真を載せますので、比較なさってください。

 

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4か月前の同部位です。改善は一目瞭然ですね。

 

 

 

いつも申しあげているように、皮膚科領域では効果が一目瞭然ですから、「論より証拠」なのです。臨床家としての経験が決まりきった一つ覚えの「標準的治療」より大切な分野です。

 

本症例は、幸いにも治療経過中に気管支喘息の発作は出現しませんでした。もし喘息発作が出現したら、私は西洋医としてβ刺激剤の吸入を短期使用、寛解期には吸入ステロイド剤を最小限度使用する予定でした。

 

気管支喘息とアトピー性皮膚炎の併発の際に、「漢方薬を甘く見る」結果としての誤った漢方処方は多く認められます。皮膚を診ないで、喘息だけを診るというような専門外来の場合です。麻黄附子細辛湯、小青竜湯などは、喘息発作時でも使用すべきではありません。必ず、皮膚病変が悪化するからです。ましてや、喘息寛解期にだらだらと処方を続け、患者は皮膚病変で苦しむという例を数多く経験してきました。ピント外れの処方というよりも、狂人に刃物になりかねません。

 

 

 

患者の自然治癒力のお手伝いをするという基本姿勢が何よりも大切なことなのです。

 

 

 

ドクター康仁

 

2014923日(火)