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自律神経失調症に見られる嘔吐の漢方治療

2009-02-22 19:16:16 | ブログ

自律神経失調症の消化器系症状として多いのが、嘔吐、胃痛、下痢です。

これらについての漢方の考え方を述べたいと思います。

伝統的中国医学では、いわゆる「肝気犯胃」という概念があります。

難しい漢方用語が並びますが、気にしないで読み進めてください。

情志失調から肝失条達をきたし、横逆犯胃から胃失和降が生じ、胃気上逆を起こし嘔吐、胃痛を起こすとされているのです。

簡単に言えば、ストレスにより肝の気の流れが悪くなり、その影響が胃に及ぶというものです。肝気犯胃はやや急性、亜急性の発症経過をたどります。

 【症状】嘔吐、呑酸(胃酸が多い)、頻繁にげっぷ(?気)をし、胸肋悶痛があり、舌辺が赤く、苔が薄膩、脈が弦です。

 【証候の分析】肝気郁鬱、横逆犯胃、胃失和降のため、嘔吐、呑酸、頻繁にげっぷをし、胸肋悶痛をみる。舌辺が赤く、苔が薄膩、脈が弦は気滞肝旺の証候であると中国医学は考えます。

 【治療法】疏肝和胃、降逆止嘔

【方薬】半夏厚朴湯左金丸加減。前方の厚朴、紫蘇は理気寛中、半夏、生姜、茯苓は降逆和胃、止嘔の効能があります。後方の黄連、呉茱萸は辛開苦降、止嘔の効能があります。四逆散を併用してもよいです。

口苦、雑、便秘の者には、少量の大黄、枳実を加え、通腑降濁を期します。

熱が比較的ひどい者には、竹茹、山梔子を加え、清肝降火をはかります。

半夏厚朴湯(金匱要略):半夏 厚朴 茯苓 生姜 蘇葉に大棗を加味したもの。

効能:行気解鬱 降逆化痰

左金丸(丹渓心法)主治:肝火犯胃による胃気上逆証 黄連 呉茱萸

四逆散(傷寒論):柴胡 枳殻 白芍 炙甘草

主治:少陰病四逆 肝脾不和

似た概念として、「肝脾不和」があります。肝気犯胃が嘔気 嘔吐 呑酸 ?気(げっぷ)を主症状とするのに対し、「肝脾不和」では胃腸全体の機能低下症状が多いのです。肝脾不和はやや亜慢性、慢性の経過をたどります。

 肝脾不和:食欲がなく、腹が脹る、腸鳴、軟便(下痢)等が見られます。舌苔が薄、脈が弦緩、治療は調理肝脾をもって治し、逍遥散等を用います。

逍遥散(太平恵民和剤局方):柴胡 薄荷 茯苓 白朮 当帰 白芍

主治:肝郁血虚脾弱証 効能:疏肝    補気健脾利水 斂陰養血

婦人科領域では「郁症の乳房張痛には逍遥散」と言われています。

肝と表裏関係にあるのが胆です。

肝胆不寧(かんたんふねい)の概念を紹介します。

 肝胆不寧:(安らかでない)イライラして眠れない、或いは悪夢を見たり、すぐにピクピクしたり、ちょっとしたことですぐ驚いたりする。視覚がはっきりしなく、口が苦い。舌苔は薄白、脈は弦細です。治療は養肝清胆寧神をもって治し、酸棗仁湯等を用います。

 酸棗仁湯(金匱要略):酸棗仁 知母 川芎 茯苓 甘草

効能:養肝血(陰)安神

主治:(虚煩失眠証)虚労虚煩不得眠

肝気犯胃の胃痛の特徴は以下のようなものです。

【症状】胃部の脹悶があり、痛みが移動し、脇までひびく。げっぷ、あるいは便秘があります。情緒不安定による発症が多い。苔が薄白、脈が弦である。

【証候分析】肝は疏泄を司り、条達を好みます。情緒不安定で肝気が鬱されると、疏泄ができず、それが胃に波及して胃の気滞が生じ(横逆犯胃)、痛みが発生します。肝気郁結で肝に属する脇部に痛みが現れます。気機不利のため頻繁にげっぷをします。同様、腸にも気機停滞、伝導不能で便秘が見られる。げっぷや放屁により気の昇降出入が一時的に改善されると胃痛が軽減する。

【治療法】疏肝理気 和胃止痛

【方薬】柴胡疏肝散を代表処方とされます。柴胡が疏肝解郁、香附子が疏肝行気止痛、川が行気疏肝活血、芍薬が養血柔肝、緩急止痛、陳皮、枳殻、甘草が理気和中寛胸の効能を持ちます。また、鬱金、青皮、木香などで理気解鬱の効能を強化することも可能です。川楝子、延胡索で理気をはかり止痛の効果を強化します(金鈴子散)。?気(げっぷ)がひどく、悪心、嘔吐が起きやすい場合には、沈香、旋覆花などを加え順気降逆の効能を強化します。

柴胡疏肝散(景岳全書):柴胡 枳殻 白芍 甘草 香附子 川芎

加減。柴胡、枳殻、香附子は疏肝行気解鬱に、川芎、芍薬、甘草は活血化瘀止痛に作用する。鬱金、青皮を加え、解鬱を強化する。

金鈴子散(素問病機気宜保命集:金鈴子=川楝子 延胡索)

次に日本人には比較的少ないタイプですが

肝胃鬱熱(がんいうつねつ)が胃痛の原因になります。

肝気鬱結が慢性化すると、肝火が生じ、その肝火が胃を犯し(肝火犯胃)、胃灼痛や痛みの緊迫が見られるようになります。肝火上逆により、煩燥、怒りやすい、酸っぱい水を吐くなどの症状が現れます。肝と胆は表裏関係であるために、肝火が胆火を挟んで上逆すると、口乾、口苦が見られます。裏熱のため、舌質が赤、苔が黄、肝胃鬱熱のため、脈は弦数です。

 【症状】胃部の灼痛、痛みが緊迫し、煩燥、怒りやすい、酸っぱい水を吐き、口が乾き、口が苦い。舌質が赤い。冷たいものを飲むと調子がよくなります。苔は黄、脈は弦或いは数です。

【治療法】疏肝、泄熱、和胃

 【方薬】化肝煎を代表処方とします。陳皮、青皮が理気、芍薬が斂肝、牡丹皮、山梔子が清肝泄熱の効能を果たします。または、左金丸を加え、辛開苦降の効能を求めることも可能です。本証に香燥類の投薬は慎重にすべきです。理気効能をもち、傷陰しない香櫞、仏手、緑萼梅などが適切です。

化肝煎(景岳全書):青皮 陳皮 白芍 牡丹皮 山梔子 澤瀉 貝母

以上に述べたように、自律神経失調症の消化器症状はほとんど漢方医学で診断治療が可能なのです。胃カメラなどの内視鏡検査でも、ほとんどの場合は軽い胃炎の所見があるぐらいです。西洋薬剤治療は一時的な対症療法です。漢方治療をお勧めする理由は、何百年も前から漢方の世界では十分な治療成績を上げているからです。

――――― ある女性にたまたま尋ねました ――――――

自律神経失調症って、どのくらいの頻度だと思いますか?

返答「現代は、軽症も入れればほとんどの人がそうじゃない?」

私も同感でした。周りを見渡すと、なんと多いのかと感じていたからです。

西洋医学的手法で良くなったという人がほとんどいないと感じているのは

私だけではないはずです。

「自律神経失調症のお問い合わせ」は下記URLより

http://okamotokojindou.com/ 岡本康仁堂クリニック